福井県立美術館

2回所蔵品によるテーマ展

「新収蔵品展@」

平成2366日(月)〜722日(金)

 

今回の所蔵品によるテーマ展は、昨年度に当館が新たに収集した作品のうち、版画、洋画、写真の作品をご紹介します。

 

版画

上前智祐 『無題』 27

37点中27点を展示

 上前智祐(1920〜)は「具体美術」に参加し、50-60年代の執拗な点描による絵画作品を経て、80年代以降には、布におびただしい数の縫い目を施した作品や、立体作品へと展開した。緻密な反復作業により、物質感あふれるマチエールを紡ぎだす作品には、近年一段と評価が高まっている。2000年頃からは精力的に版画作品を制作している。これらの作品には上前の生涯の仕事の集大成が凝縮されているといえる。

 

洋画

鈴木千久馬 『姫薔薇』

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 鈴木千久馬(18941980)は、1972年に福井県出身の洋画家として初の日本芸術院会員となっている。初期にはフォーヴィスム(野獣派)の影響を受け、黒色を中心として描いた重厚な作品が多いが、長い試行錯誤の末、晩年には白色を中心とする独特の様式を確立した。

 

福岡繁樹 『不詳』

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 福岡繁樹(19031950)は福井市生まれの洋画家である。戦前は福井の美術運動グループ「北荘画会」の中心的なメンバーとして活躍し、独立美術協会、帝展、創元会などに出品した。本県洋画壇の草創期から活躍した作家であるが、震災や早世等により残存する作品は数少ない。

 

吉田彰 『人間 A

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 吉田彰(19312008)は、本県の公立学校で美術教師をしながら美術文化協会を中心に発表活動を続けてきた洋画家である。学生時代からすでに同協会の会友となっており、奨励賞も受賞している。作風は抽象から具象と幅広いが、いずれもやや超現実的雰囲気を漂わせるものが多い。

 

増田孝 『華』

 増田孝(19361997)は越前市(旧武生市)生まれの洋画家である。二科会に所属して作品発表を重ね、評議員、北陸支部長などを歴任した。また長年金沢美術工芸大学で教鞭をとり、後進の育成にも尽力している。後年の作品には、人物、風景、静物等を、明るい色彩と軽やかな筆致で描いたわかりやすいものが多いが、初期の頃には本作のように超現実的な雰囲気の作品も描いている。増田は10代の頃から、生涯を通して二科展へ出品し続けたが、本作だけは例外的に美術文化展に出品している。

 

写真

土田ヒロミ

KUシリーズから7

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 土田ヒロミ(1939〜)は2008年に「土門拳賞」を受賞した福井県出身の写真家。1960年代末から、日本の土俗的な文化、ヒロシマ(原爆)、高度経済成長、バブル経済などのテーマで、変貌する日本の姿を撮り続けて、これまでにない「時代」や「人々」の表現を獲得してきた。またこれらの「徹底的な記録」に踏みとどまる倫理性の高い作品群とともに、近年は、デジタル技術を積極的に活用して、写真の「記録性」を揺さぶる表現にも踏み出し、芸術写真家としての側面も見せている。