旬の美味しさ大解剖

伝統野菜「ナス」

(手前右)吉川ナス、(手前左)妙金ナス、(奥)新保ナス
(手前右)吉川ナス、(手前左)妙金ナス、(奥)新保ナス

旬の時期 6月〜10月頃
【お問合せ】
福井県経済農業協同組合連合会 園芸特産課
TEL:0776-27-8258

形や味は違っても守り続けていきたい
生産者の思いは同じ。 幻のナス3種。

 夏から秋にかけて旬を迎えるナス。福井県には伝統野菜として知られているナスが3種類あります。そのどれもが生産者、生産量ともに少ない貴重なものです。

 福井市内から勝山街道を走り、市街地に入った辺りに見えてくる荒土町妙金島地区。この地で作られている伝統野菜に「妙金ナス」があります。清らかな山々から吹き抜ける風、九頭竜川の砂地が堆積した砂壌土ということもあり、古くから良質な農作物が作られています。「妙金ナスは味がいいことで知られており、高値で取引された時代には、ナス栽培だけで何人もの子どもたちを育てていました」と唯一の生産者である中村富枝さんは言います。妙金ナスは最長でも十数センチ。小さな卵型をしており、大きくなっても種子がないのが特長です。濃い紫色で、肉質がしまっているため煮崩れしません。

 福井市街地近く、新保地区で育つ「新保ナス」。今から40年前までは盛んに栽培されていましたが、千両ナスを始めとする新品種が登場以来、生産者が激減。そんな中、地元にある福井農林高校と啓蒙小学校の生徒が連携し、40年ぶりに幻の新保ナスの復活となりました。その種を育苗している「啓蒙壮友会」の一員である野路英二さんは「水分がのっていて朝採りナスが一番美味しい」と教えてくれました。新保ナスは、紫皮が薄く、アクと種子が少ないのが特長です。丸型と卵型の2種があり、どんな料理にも合いますが、特に卵型は漬物に、丸型は田楽で美味しく頂けます。
 もう一つ、全国的に注目されている「吉川ナス」があります。福井県のほぼ中心、鯖江市旧吉川村で栽培されています。1000年以上もの歴史を持ち、一説では加茂ナスのルーツとも言われています。20年前までは10人以上の生産者がいましたが、現在では加藤武雄さん85歳と、奥さんである澄子さん80歳の二人だけになってしまいました。風があたると傷がつきやすく、品質も悪くなってしまうためハウス栽培が基本です。農薬を使用せずに栽培されるため、手もかかり、高齢となった二人の負担は想像以上に重いのです。ソフトボールくらいの大きさがあり、身が固く、煮崩れしにくいのが特長です。1cmほどの輪切りにし、甘味噌をぬって田楽で食べると絶品です。首都圏からの注文が多く、実際にハウスに足を運ぶ料理人や卸業者もいるそうです。

 福井が誇る3種の伝統ナス。それぞれの形や味わいは違っても、末長く残していきたいという生産者の熱い思いは同じです。ずっと受け継がれて欲しい伝統野菜です。
吉川ナス
大きなナスは存在感も抜群。首都圏では料亭などで使用されているそうで、需要は高まってきています。しかし後継者不足が心配されています。(吉川ナス)
新保ナス
幻のナスと呼ばれています。40年ぶりの復活の際、福井県農業試験場に冷凍保存されていた種を使って栽培されました。(新保ナス)
妙金ナス
自然豊かで寒暖の差が大きい奥越前地区で育つ農作物は、美味しいと評判も高い。側を流れる九頭竜川方面を見上げると、経ヶ岳が望めます。(妙金ナス)
新保ナス
福井市街地にあるナス畑。田園地帯を挟むように国道が走っています。ここで幻のナスが栽培されているとは、あまり知られていません。(新保ナス)
吉川ナス
ヘタはやや小さく、トゲは少なく、肉質はよくしまっていて緻密です。日野川の支流に位置するため、肥沃な土砂が堆積した地で良質なナスが育っています。(吉川ナス)
妙金ナス
朝採りは艶っぽく、弾力があります。「黄金漬け」と言われる漬物はこの地域の郷土料理の一つです。酒粕と塩、砂糖を混ぜた床に丸ごと漬けるのが一般的です。(妙金ナス)
加藤武雄さん、澄子さん 【生産者の声】
加藤武雄さん、澄子さん
鯖江市吉川地区にて「吉川ナス」を作っています。6月〜11月まで実を付けます。地元マーケットや直売所などで販売される他、首都圏などにも発送されています。
野路英二さん 【生産者の声】
野路英二さん
福井市新保地区で「新保ナス」を栽培。地元の生産者が集まった「啓蒙壮友会」というグループが協力して生産しています。7月初旬〜10月いっぱいまで収穫、出荷されます。
中村富枝さん 【生産者の声】
中村富枝さん
勝山市荒土町妙金島にて「妙金ナス」を栽培。6月下旬〜9月いっぱいまで収穫となります。県内のフレンチレストランに出荷し、地元の直売所では自らが販売しています。