福井県立大学特別講演会
「ふくい2030年の姿」
〜25年後のふくい 夢と希望の未来像〜

 このページは、平成17年7月27日(水)に県立大学福井キャンパスで行われた「ふくい2030年の姿」についての特別講演会の内容をまとめたものです。


【作成の背景・意義】講演会の様子
 知事の任期の4年間で何をなすべきかというのは、私の政治的な責任である。しかし、その4年だけで物事を議論すると、どうしても話が短い期間になる。今回、少し長い目でものを見た方がいいだろうということで、平均30代半ば、皆さんよりちょっと先輩達が「ふくい2030年の姿」を作った。ただ、私自身も参加をし、中身もいろいろ議論しているので、直接ではないが私が責任を持って公にした、と思ってもらった方がよい。
 これからは人口減少社会を迎え、このままだと83万人の県民が70万人台ぐらいになる。また、グローバル化、情報化ということで、世の中は大きく変わると思う。そういう中で、新しい視点や切り口を入れながら25年後の2030年の姿を描いたということである。
 25年後というと一つの世代が世代交代をし、政治的、社会的、国際的にも物事が一つの変化をする期間ではないかと思う。皆さんは、25年後は40代半ばで、社会に出て中心的に活躍している時代だというイメージを持ってほしい。

 「ふくい2030年の姿」は、25年後には何ができているかとか、何かを約束するとか、あるいは担保をするという長期計画では勿論ない。むしろ、我々が今年来年と、目の前のことをしっかりやるために、逆にこの「ふくい2030年の姿」を参考に今の仕事をするということである。
 従って、今なすべきことの「道しるべ」、未来からの声援に使おうということである。また、期間も長いので、5年後ぐらいには見直さなければいけないかもしれない。どんどん変わっていくものだと思ってもらった方がいい。
 「未来のことを語る」ということは、「未来の目で現在の我々を眺める」ということである。そして、こういう見方であるから、「今、我々はこういうことをしなければならない、したがって将来についてこんな発想をとるのだ」ということにつながる。

【「基本的視点」(福井県の現状と課題)】講演会の様子
 25年後がどうかということになると、今の良い点と良くない点を十分認識して議論をし、どういう切り口で将来を見通すかということである。その中で、特に大事な言葉として、「価値観」とか「働き方」、「社会基盤」、「地域社会」、「人」がある。
 25年前と今を比較すると、共通のテーマはあるが、日本人の心や世の中の風潮、世情がすっかり様変わりをしている。我々は、25年後を描くために一旦、25年のページを逆めくりして、25年前にどんな様子だったかということを調べて、2030年がどうなるかというアプローチを取った。もう1つは、古典や未来学者などの本も随分、執筆した人たちは調べた。特に、古典、ずっと昔の本を見ると、意外と将来が見えるというようなことがあるようだ。そのような接近法を取った。
 総じて、衣食住、ボランティア、教育、農地の資本や情報基盤など、福井県は潜在的に優れたところがたくさんある。こういうものをどのように活かし、また、こういうことをベースに考えていこうということが大事である。

【「生活優先、自立社会」(目指すべき社会像と価値観、豊かさの新しい基準)】
 最近、生産や消費から「生活」へ、「生活者」の視点に立ってなどと言うが、「生活」とは一体何かについて考えてみてほしい。生活とは何だろう、なぜ生活を優先するのだろう、また、何に対して優先するのだろう、ということが問題になると思う。
 生産だけ、消費だけのことを考える社会ではいけない。また、市場やお金のことだけを計算に入れる福井県であってはいけない。こういうことが「生活優先」であると私は思う。さらに、「参加」や「行動」といった新しいファクターも生活に加わるのではないか。
 もう1つの「自立」の方は、個人が自立するということ。民間としては官にあまり頼らない。地方も国から自立する。男性と女性の関係から言うと、今のように男は女に日常生活で頼らないということである。自分で身近なことをしっかり処理するなど、新しい考え方を取り入れる必要があるという考えが、ベースになっている。

【「知活福井」(「産業・働き方」の姿、あり方)】
 産業や働き方については、我々の「知恵や知識を活かして、仕事に喜びを持って働ける」というのがこれからの社会であり、そういう社会にしなければならないという問題意識で描かれている。
 また、福井県の平均年齢は、2030年には49歳ないし50歳になる。労働力人口というのは15歳から64歳までだが、この考え方はもう古いということで、「新しい年齢観」を提示している。年配の方は、65歳を過ぎても80歳近くまで、能力や体力があれば、社会に役立つ場合によっては仕事をしている。若い方は、「資格」とか「専門性」を絶えず努力して自ら身に付けて、いろいろな仕事にチャンスを見つけてチャレンジをする。そういう世の中でなければならない。特に、この60歳から75歳にかけての世代を「達年」としている。「熟達」をして「達者」にいろいろ社会で頑張ってほしいということである。
 それからもっと大事なことは、男女共同参画を超えて、同一の人格として女性と男性がお互い助け合う、どちらかに依存することのない「女性と男性が共立する社会」。男女が独立した形で努力してほしいという思いがここにある。

講演会の様子  また、福井県の産業を、本当に世界の市場で活躍する産業にするということである。農業についても、農業者が盛んに農業以外の分野に出て産業化をする。あるいは東アジアにおいて福井が中心的な役割を果たすといったイメージである。福井県の企業というのは、非常に高いノウハウ・技術を持ち、また、人口当たり社長の多い県であるが、マーケットで最終製品を売り出すことがあまり得意ではない。そういうものを直していく。
 原子力関連では、これまでは電力をつくる工場的な部分が非常に多かったが、原子力の技術を地元で活かし、県立大学なども含めて大学間の連携など、技術者が連携して原子力の中に活かす。あるいは、医療などの分野でも利用する。東南アジアの技術者の養成をする。いろいろなことがここに書かれている。

【「四通八達福井」(「社会基盤」の姿、あり方)】
 インフラについては「四通八達」という漢文調の言葉が使われている。石川県境の方には北陸道、将来は勝山・大野を通って中部縦貫自動車道へ。また、敦賀から米原の方には北陸道、若狭湾には舞鶴若狭自動車道と4つの入り口がある。小松空港や敦賀港、テクノポート港、北陸新幹線などを足すと、八達になるのかと思って読んでいた。
 25年後には、福井県全体の交通条件が大幅に良くなる。我々も努力して、25年後は日本海側で三大都市圏には総合的に一番近い地域になっているというイメージを描いている。今と同じ時間で福井県から行ける地域の人口は、3倍近くになるだろう。
 この中で、観光あるいはビジネス、鉄道と道路の関係、自動車社会をどう直していくかという課題を整理している。それから、中心市街地や農村の問題、多世代の近居、住宅のシステム、福井が「第二の故郷」ということで週末は福井に来ていただくといった夢や希望が書いてある。
 特に、福井県の場合、自然が大変豊かで、また身近にあるので、そういうものを活かした社会にしていこうということである。

【「福縁福井」(「地域社会」の姿、あり方)】講演会の様子
 「福縁」という言葉も新しい用語である。それぞれの自立した個人の趣味や考えに基づいて、いろいろなネットワークを組むというのが「福縁」である。
 とにかく、「生活優先」ということと深く関わるが、人間関係やネットワークというのを新しく築いていく必要があるということである。また、家族は三世代が「近居」すると書いてあるが、同居だけでは問題があるかもしれないので近いところに住み、支え合うという姿。さらには、「縁ステーション」と書いてあるが、有志が集まるネットワークの本拠をつくって、さまざまな交流をするということである。
 今回のレポートで、特に若い人たちが気を使ったのが、安全・安心の問題である。こういう「地縁」、「血縁」あるいは「福縁」という信頼関係のもとで、福井県が日本で最も安全・安心な地域になり、自慢できる地域になるようにという願いがここにあると思ってほしい。

【「夢福井人」(「人」の姿、あり方)】
 最後は、人づくり、人間関係について話をする。これは、大学にいる時だけ学ぶということではなくて、一生涯、いろいろな意味で学んでいく社会にしなければならないということである。
 また、現在、教育上の問題を考えると、子どもの時を、大人になるための過渡期と考えることをなくそう、「子ども中心の社会」に何とかして考えていこうということである。つまり、「大人のための子ども」でもなく、「大人になるための子ども」でもなく、「子どもは子ども」として存在をするということである。そのための学校でなければならないであろうし、また、そうした親子関係でなければならないということである。
 さらに、小さいときから「何になりたい」という好きな道、「将来どういう方向を目指していくか」ということを、自らも考えることができるような教育環境にしていく。これが大きな眼目である。特に、学校の場合、教育の技術なり、学校自体の設備水準なりが、最も地域で誇れるような学校でなければならない。最近、学校よりも家の方がきれいだとか、家は涼しいけれども学校は暑いとか、学校のトイレは汚いとか、学校には立派な器械がないとかではいけない。「子ども中心の」良い学校にしなければならない。
 また、進学等の問題についても、小学校であれば中学、中学校であれば高校、高校であれば大学というように、絶えず次の段階を追うような教育は避けるべきだろう。これは現実的にいろいろな課題は多いが、そういう方向をこれから目指そうと、ここで述べている。

 もう1つの人のテーマとして、「健康長寿」という概念がある。男性も女性も全国で長生きは第2位になり、実際は男女とも長生きということでは全国1位の長生き県かもしれない。その際、単に長寿というのでは困る。健康で長生きでないと。
 福井県が長生き県であるというのは、いろいろな事情がある。お米をたくさん食べる。それからイモをたくさん食べる。マメもたくさん食べるが、塩分は少ししか摂らない。また、共働きは日本一。農業も盛んであるから、年を取っても60歳の農業、70歳の農業、80歳の農業ができると思う。家も大きい、貯金は日本一多い県である。これも観光などにも活かさなければならない。福井県に来てもらい、食べ物、生活を見てもらい、福井県の良さを味わってほしいということである。
 また、全県長生きのような福祉や医療について努力をしなければならない。特に、がん対策を福井県として進めたいと思う。これから最も発達するのは陽子線がん治療などの技術分野が大きいので、これを原子力などの技術や条件を活かして、福井県として充実していく。

 最後に、人の心の問題について話をしたい。もちろん福井県が豊かになり、幸福でなければならないが、最終的には「自信」や「誇り」をみんなで持てるように、また、持とうではないかというのが、政治の最終目標である。 由利公正(ゆりこうせい)は幕末の福井藩士で、「五箇条の御誓文」の起草者である。福井には優れた文化や歴史がある。そういうものを感じてもらい、教育に役立てることで「五箇条の御誓文」の草稿を購入した。まもなく県立図書館等で展示をするので、一度見てもらい、いろいろ感想を持ってほしいと思う。 また、近松門左衛門は福井(鯖江)の出身である。「日本のシェークスピア」とも言われている。ちょうど去年、『曽根崎心中』の初演300年の年であった。近松は「心中もの」だけを書いたわけではなく、『国姓爺合戦』などバイリンガルの主人公が登場する面白い活劇作品もある。30分位で読めるので、一度さっと読んで欲しい。何かまた思うところが出てくると思う。
 再来年は、26代天皇の継体天皇の即位1500年である。この県立大学の近くの山の方で育てられたのではないかと私は思っているが、大阪で即位をされて1500年ということになるので、そういう顕彰も必要になると考える。
 もう1人は、白川静先生である。福井の出身であり、立命館大学名誉教授、漢字文化の研究者である。県立図書館に入ってすぐ左側に、この4月から白川静先生のコーナーがある。 私が、白川先生に一番深く感銘したのは、粘り強く、一つのことに一生涯を捧げたことである。今95歳でいらっしゃるが、なお、勉強しておられる。そして分からない所があると宿題として残し、また数年のうちに勉強しようと。こんなお考えであるので、学生諸君も大いに先生に学ぶ必要があると思う。