2030年の日本と福井を考える県民フォーラム
第2部 パネルディスカッション 知事発言要旨

 平成17年8月22日、約600人の県民や自治体職員等の参加を得て「2030年の日本と福井を考える県民フォーラム」を開催しました。
 竹中平蔵内閣府特命担当大臣(経済財政政策)の基調講演に引き続いて行われたパネルディスカッションでは、国際基督教大学客員教授の八代尚宏氏ほか4人のパネラーに登壇いただき、「25年後のふくい ―福井の目指すべき未来像― 」をテーマに、「産業・働き方」、「社会基盤」、「地域社会」、「人・人づくり」の各分野について、本県の目指すべき未来像を展望しました。
 パネラーの一人として登壇した西川知事の発言要旨は、以下のとおりです。なおフォーラム全体の概要は、http://info.pref.fukui.jp/seiki/fukui2030/index.htmを参照してください。


【ふくい2030年の姿】
 知事は、昨年4月に県庁内の若手職員に「ふくい2030年の姿」の検討を指示されたと聞いております。25年後というずいぶん遠い未来を検討の対象にした考えについて、知事にまずお伺いしたいと思います。

【西川知事】
 25年後はずいぶん先のような感じがしますが、どうしてそういうことを考えたのか。先ほど竹中大臣は、この1、2年がたいへん大事だという話をされました。今が転換点であると言われた。そして、大臣の話を伺っておりますと、経済的な問題を中心にいろんな問題点を考え、日本の社会全体に将来の問題を広げていくという考えを示されたように、私は伺いました。
 福井県では、福井という47都道府県の1つの地域がこれからどうなるのか、ということを中心に、私たちの生き方、生活の仕方を描きました。私が描いたというよりも県庁の若手職員に自ら描いてもらい、私もいろいろ相談にのったという意味になると思います。
 25年という意味ですが、これは後ほど八代先生にもお伺いしたいのですが、私は、25年とは一つの大きな社会変動の単位、一つの節目、そういう長さではないかと考えています。つまり、一つの世代が次の世代に完全に移り変わる長さではないかと思います。前の世代が考えたけれども、実行しなかったことを実行する世代、というのが世代交代だと私は思っております。世代が変わるということは、考えが変わると同時に、人が変わり、行動が変わる。そして、社会的にも政治的にも国際的にもいろいろ変わる長さではないかと思います。
 私自身は、政治的にはマニフェストということで、議会の皆さんと協力しながら政治を進めていますが、非常に短期の、せいぜい4、5年の問題が議論されがちです。もちろんその中には、10年ぐらいに及ぶものもありますけれども、やはり短期、あるいは中期という感じですから、より長い議論もする必要があると考えました。 そこで、何と言っても、政治には夢や希望が必要ですから、県庁の若い皆さんに福井県のこれからの生活の仕方を描いてほしいということで、いろんなトレンドを勉強し、レポートを作ってもらったという意識です。

【産業・働き方の姿(知活福井)】
 「ふくい2030年の姿」では、農業や原子力産業などの分野についても触れております。若手職員が描いた農業や原子力産業などの分野の未来像に対して、知事はどのように考えていらっしゃるのか、伺ってみたいと思います。

【西川知事】
 一般の産業については、様々な議論がこれまでもなされていると思います。特に製造業については、「福井を本拠にして世界市場を目指す」というビジョンが、25年後の姿としてあります。また、働く人たちは、高齢まで社会に役立ち、また働くことができる。これは、いわゆる「年齢観」を大幅に見直す必要があるということが背景にあるのです。 若手職員のレポートを作る際の認識として、農業は、これまで産業として議論されることが少なかったということがあると思います。農業については、古くて新しい問題ですが、ごく身近にある一種の産業的なフロンティアであるという認識が背景にあると思います。
 レポートでは、「知活福井」という中で産業全体を述べていますが、知恵や技術、工夫をいろいろな産業面、あるいは従来は産業として十分認識されていなかったものに及ぼしていこうという考えであるかと思います。そう考えますと、農業は知恵や工夫を加えるとますます産業として、また、新しい分野として発展するだろうということであります。
 一例を挙げますと、福井県の水田は日本一と言っていい。圃場の整備が進み美田です。しかし残念ながら、そこからの生産性は、逆に全国的にも非常に低い水準です。これまでずっと米中心の農業なのです。米自身も新しい技術が必要ですが、野菜や他のいろいろな農業分野に拡げていくことが極めて大事だと考えます。そして、高齢の方も一生涯を通じて仕事ができる、また、先ほど議論がありましたが、「健康長寿」などにもつながっていく産業であるということです。
 最近、中国に福井県産のスイカを売りに行って、アッという間に売れてしまう時代ですので、農業を、そして大事な社会資本である農地をしっかり活かしながら、農地を減らさないで、そこで県民が健康や体力を考えながら産業としてこれを維持していく。こういう新しい農業問題についての方向付けを行っています。 もう一つは原子力の問題です。これも従来、あまり産業としては意識されなかったのですが、これについても新しいものの見方、戦略を考えています。原子力というのはなるほど、電力を供給するわけですが、そこには人材とか技術、潜在的に研究分野があるわけです。
 せっかく福井県には、従来から15基の発電所があるのですから、何とかして福井を拠点に、アジアの原子力産業あるいはエネルギー産業の教育機関・研究機関として活かしていく。そして地元の産業に、原子力の未活用の技術を移転する。人材を集めて、教育機関として充実していく。また、原子力の技術は、広くはがん治療などの医療の面にも深く関わりますので、福井全体がこうした医療、あるいはがん治療の中心地になっていくのではないかという方向付けを議論し、報告書にしているのが特色だと思います。

【地域社会の姿(福縁福井)】
「福縁」社会の実現のためにボランティア、NPO活動の重要性が一層高まるものと考えております。この点、知事がどのように考えているのか、ご発言を求めたいと思います。

【西川知事】
 「福縁」という言葉は、このレポートを作った若い人たちが考えた言葉であり、一種の造語だと思います。幸せ、あるいは福井県の福につながっていると思います。
 今、中井さんがPTAの活動の話をされましたが、福井県はまずボランティアの先進県。日本で一、二を争う先進県だと思います。先般の災害の場合でも、先進県であるが故に多くの皆さんが応援に来てくれましたし、福井県でいろいろな勉強もしてもらっています。また、福井県の人たちも全国に出かけ、実地の勉強をするという心構えであり、ボランティア先進県であります。これは行政とボランティアが協力をしながらそういう形になっています。
 もう一つは、NPOの活動が非常に福井県は活発であり、大都市と地方とでは差がありましょうが、人口当たりのNPO認証数をみますと全国で6番目に高いわけです。社会教育とか子育て、まちづくりなど、多くのNPOの集まりがあります。
 それから、この「福縁」ですね。「地縁」、「血縁」というのは昔から福井県はしっかりした伝統基盤がありますが、こういうものがない所に新しい特定の目的を持った縁、ネットワークができるわけでは決してないと思います。元々、しっかりしたつながりがベースにあって、そして新しい目的のネットワークができるのだと、私は思います。そういう認識で、こういう「福縁」という言葉を使い、新しい形の目的に応じたつながりを大事にしたいということなのです。
 その背景としては、先ほど竹中大臣も講演されましたし、パネラーの皆さんもおっしゃっておられます。「団塊の世代」がこれからリタイアをされます。こういった人たちの地域貢献です。これが非常に大事になってまいります。「団塊の世代」の皆さんは非常にパワーがありますし、そういう意欲をお持ちだと思います。世界を旅行されると同時に、地域で熱心に、かつ深く活動される人たちではないかと、私は思うのです。
 こういう意味で、「団塊の世代」の皆さんが定年を迎え、そしてそうした人たちが世代を超えて、あるいは仲間意識を強めながら、子育て、あるいは防犯、まちづくりなど、いろいろな目的の中で活動する。こうした人たちの大きい力を得て、子育てにおいては最もしっかりしたネットワークを持つ「子育て日本一の福井県」、「安全・安心の福井県」が、これから20年後、あるいは25年後にできて欲しい。また、しなければならないということを「福縁福井」で表現しようとしていると理解しています。

【おわりに】
県では、「ふくい2030年の姿」を一つのたたき台に、本日のパネラーの方々を始め、県民の皆さんからの意見を得て議論を深めたいとしております。今後の県政にどのように反映していこうと考えていらっしゃるのか、この点を知事に伺ってみたいと思います。

【西川知事】
 今日は、いろいろな方面からのご意見をいただき、本当にありがたく思っております。最後にということですので、この「ふくい2030年の姿」について、今後の反映の仕方などの問題について申し上げたいと思います。 一つは、ざっくばらんに言いますと、このレポートは、内容がデッサン的な荒削りの手法で表現した、また、概略を描いた部分があるということです。検討会のメンバーは、自分たちの考え、県民の皆さんへのアンケート、有識者や経済界の人たち、県立大学を含めた大学の学生の皆さんなどいろいろな方の意見を聞き、また本なども読んで勉強をし、その思いを込めておりますが、やはり若い人たちの作ったもので、詳細な意味では完全ではありません。
 かつ、ここに書いてあるものは一部の項目であり、まだ倉庫の中にはいろいろ思っていたことがあるのですが、「ここまで書くのは方向としていいのか」とか、「全体にどういう表現が分かりやすいか」ということで、たくさん残っているものがあるように私は見ていますので、それもこれからどのように活かしていくか、ということがあると思います。
 そしてこのレポートについて、県内外の人たちに意見をいろいろお伺いしましたところ、一つは「まだまだ見やすくないのではないか」、「若者が作ったのだから、もっと大胆な発想をしてもよかったのではないか」、更に「自慢するのは変かもしれないが、福井の良さをもう少し前面に出しても良かったのではないか」というような意見が出ております。
 これは一度作って終わりではなく、国でもこれからのお考えがあると思いますが、多くの人の意見なり、描ききれなかった部分なり、今後の経済社会の動きも一年一年変わってきますので、改造するといいますか、加えていくことが非常に大事だと思います。
 今回、福井県としてこういうレポートを作りましたが、まず、地方が自ら考え、作ることが大事で、これは国にいろいろなものを申し上げる機会にもなります。また、職員の意識改革にもなったかと思います。予習というか、この会合でも先に席に座っていると、どんな人がお座りになるのかよく見えるわけでして、後になるとなかなか勉強にならないわけです。
 また、従来の常識、あるいは通念を破ることはなかなか勇気のいることです。しかし、前もってこうしたレポートで描くことによって、「レポートにこういうことでまとめてあるのだから、我々が今このようにすることは、こういう意味があるのではなかろうか」という問題提起の良い手段、道しるべになるのではないかと、私は最近思っています。それから、将来のことを考える土台がこれまであまりなかったので、県民の皆さんが福井のことを考え、そして日本の将来を考える良い契機になるのかなと思います。
 何と言っても、日本人の場合、「夢を語る」のは非常に少ないというのが私の実感です。かつ、「夢を聞いてあげる」というのはもっと少ないというのがこの日本の遅れたところだと思います。それを良くしていく。みんなで夢を語り、そしてそれに聞く耳を持つ。そして、国においても、地方においても、良いものは実行するという契機になるといいと思っております。