| 地方分権実現のための新しい地方税制 |
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このページは、鰍ャょうせい発行の「月刊 税」2005年11月号に掲載された知事の寄稿文です。
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1 分権時代にふさわしい税制の抜本的見直し
地方分権は、国民が自らのことを自ら決めるという真の国民主権を実現するために不可欠の改革である。新しいお米には新しい俵が必要であるように、地方分権時代にはそれにふさわしい税制を用意しなければならない。これまでの三位一体改革議論では、税源移譲の額やそれに見合った税目にばかり目がいき、税制の全体をどのように構築すると、その目的が達成できるかという本質論が見落とされてきた。
今後、国税と地方税の比率を1対1とするため、現在の税収を前提としても6〜7兆円の税源移譲が必要となる。移譲するにもそのための仕組みができないと、理念論に終わることになってしまう。この機会に国と地方を通じた実行可能な税制の抜本改革を実施していかなければならない。
以下においては、地方税の中心となっている住民税について、地方分権時代に合った新しい住民税の考え方と、全体としての地方税の責任ある賦課徴収体制のあり方についての提言をしたい。
2 新しい税収帰属観念の導入
現在の個人住民税は、税の徴収便宜の観点から、すべての所得が現住所地で発生したという制度上の一種の擬制(フィクション)によっている。そのため、戦後60年間の地域変動によって、大都市圏と地方圏の自治体間の税収格差が極めて大きくなっている。
しかし、税収帰属の考え方は、税の性格と制度設計の視点によって異なるものであり、絶対的なものではない。個人住民税のように税収の偏在が制度設計時の想定をはるかに超えて拡大すれば、当然税収帰属の考え方を見直すべきである。
大都市圏で発生する所得のかなりの部分は、かつて地方圏から移動した多くの優れた人材によりもたらされている。また、優秀な人材の育成には大きなコストを伴っている。こうした状況を考えれば、所得に対する税収を現住所地のみに帰属させるのではなく、納税者のライフサイクル全体の中で考える新たな税収の地域的帰属の観念を導入する時代に来ている。
こうしたことから、私は、今回の税源移譲に合わせて、個人住民税に『共同所得割』を導入すべきと考えている。
(図1参照)
この方法により、地方税制(住民税)の枠内で、偏在性の制約を解消しながら税源移譲が可能となる。
要約的に述べると、税源移譲される個人住民税の所得割をもとに、「共同所得割」を創設し、全国の地方公共団体の共同税として徴収する。それを、例えば、教員数や児童・生徒数、学校数・クラス数といった義務教育に必要な経費に係る配分基準によって全国の地方公共団体で税額の清算を行うというものである。
これは税収帰属の新しい考え方であり、地方交付税のように、財政需要に応じて一定基準で財源を配分する方法とは基本的に意味が違うものである。
義務教育を受ける時点では、個人は、一般的に行政サービスについて対価なく利益を受け取っている。個人は現在受けている行政サービスに対する負担ばかりではなく、過去に受けた行政サービスのコストを、ライフサイクル全体の中で、現在の所得の中から分割して負担することが望ましい。個人の生涯を通じた受益と負担の衡平の観点からこうした納税の仕組みが適当である。これは、全国的に見ると、いわば制度化された「ふるさと納税」とも言うべきものである。
3 新しい賦課徴収体制の構築
次に、今回の税源移譲により、所得税と個人住民税の税収は逆転し、税の徴収に対する地方の責任が著しく増大することを忘れてはならない。
現在、個人住民税の賦課徴収は、都道府県の委任を受け市町村が行っている。特に小規模の市町村では、住民と身近なために滞納処分が行いにくいといった現実的な事情もあり、個人住民税の収入率は低下傾向にある。これは、厳しい財政事情からも、税の公平性の観点からも大きな問題である。
このため、都道府県による直接徴収や市町村による共同の徴収組織の設立など、市町村と都道府県の共同の取り組みが行われているが、現時点では十分な効果を上げてはいない状況にある。
また、現行の税制度では、課税標準の捕捉や所得の認定等を国税に準拠しており、地方自治体が自ら調査を行うことがないため、賦課徴収能力が国税に比較して弱体であることも否めない。
このような状況において、今後、地方がその責務を果たしていくために、賦課徴収のひとつのあり方として、全国のすべての都道府県、市町村で構成される広域連合(このシステム自体にも様々なレベルの選択肢が考えられる)を構成し、都道府県税、市町村税のITを活用した税収決済や賦課徴収を行うこととしてはどうかと考える。
このような組織化が実現すれば、賦課徴収に関するノウハウの共有、競争化により、地方の税務職員の賦課徴収能力と志気が向上するとともに、全国規模での徴税コストの削減も可能となる。
4 むすび
地方分権改革はまだ具体化が始まったばかりであり、改革を地方自治体と納税者との関係で実質を伴ったものとしていくためには、地方の個人所得課税のあり方についても、従来の枠組みを越えた新しい仕組みやシステムとに改革する必要がある。
今後の地方分権社会にふさわしい税制の構築に向けて、われわれが自ら企画し、全国知事会などの場で議論を行い、国に対し提案し答を出していくことが必要である。
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(図1)
(1)『共同所得割』のシステム
○税源移譲される個人住民税所得割(約3兆円)をもとに、『共同所得割』 を創設し、客観的な指標で税収を各団体に帰属させることで、団体間の税 収格差拡大を根本的に解消し、併せて地方交付税への負荷を軽減する。
○『共同所得割』の創設に当たっては、個人住民税の性格を踏まえ、個人個 人のライフサイクルに着目し、生涯を通じた受益と負担の衡平の観点を税 収の帰属に折り込むこととする。
○例えば、義務教育費国庫負担金の廃止に対応して、教員数や児童・生徒数 により『共同所得割(地方教育税)』の税収を帰属させる。(次表参照)
(2)『共同所得割』導入による効果
グラフは、税源移譲される3兆円をすべて都道府県分とした上で、個人 住民税を10%フラット化した場合と都道府県の教員数で配分した場合と で、義務教育費国庫負担金との過不足額を示す。
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