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昨年4月マニフェスト(政策公約)を掲げて知事に当選して以来、その実現に取り組んできた。参考とするモデルのない新しい取り組みだけに課題も少なくない。地方政治の現場から、マニフェストの意義と問題点を指摘したい。
03年は政治の世界における「マニフェスト元年」といえる。4月の統一地方選挙で私を含めた複数の知事が地域マニフェストを提示して当選。秋の衆議院総選挙では与野党が政権公約として発表した。英国生まれのマニフェストは日本でも市民権を得つつある。
マニフェストの特徴は、期限や数値目標、財源が明確な政策が示されている点にある。県の職員や議員、県民が共通の認識にたって地方自治にかかわることが可能になる。
マニフェストに基づく県政をめざした私がこの1年重視したのは、「スピードと決断」だった。就任後すぐ、県の各部局と意見交換し、それぞれ何ができるか、具体案を提出してもらった。そのうえで、各部局長と「政策合意」を結び、達成度を年度ごとに公表するという他県にない方法を採用した。
職員は仕事の早さについていくのが大変だったようだ。しかし、庁内の仕事の進め方も少しずつ確実に変わってきている。目標や数値を常に念頭において行動するなかで意識改革が進んだ。役所的な待ちの姿勢や前例踏襲主義は影を潜めた。
もちろん、職員の自発性をもっと高めなければならないという課題はある。マニフェストはあくまで政策の目安であり、県民にとって解りやすく成果が見えるようにするには、担当者の勉強や熱心さが不可欠だ。マニフェストを下敷きにしつつ、これを超えて現実の問題を解かなければならないと痛感している。
マニフェスト県政も2年目を迎え、いくつかの課題が見えてきた。
第一は進捗状況や実績をどう評価するかである。政党のマニフェストについて先般、経済団体や民間調査機関による評価の結果が発表されたが、県民との「約束」である県のマニフェストの評価方法は政党のそれとはおのずと異なる。県内で評価する方法を編み出し、4年間の任期の半ばには中間的な評価を加えたい。ただ、どんな方法になろうとも、県民にきちんと情報を提供する姿勢は崩してはならない。
第二は中長期にわたる構想をどう示すかだ。マニフェストは任期中の目標なので、短期の視点に傾きがちである。将来の福井をどんな姿にしたいのか、県民の夢をどう描いたらよいのか、といった長期的な県政の方向を示せないかと思っている。その手法はまだ未知数である。この春、将来にわたって県政に携わる若い職員達の考えや希望が構想に反映できるような勉強会を作り、四半世紀後の2030年の福井県の進路について検討を始めた。教育のあり方、家庭と人々の働き方、都市と農村の関係、県と他地域の関係などについて、外部の専門家も招いて議論をしたい。
第三は県民との連携だ。マニフェストは県民の行政への関心を高める機能を併せもつ。1年を経過して特に感じるのであるが、政治との関係でこの点は一番重要である。マニフェストにとらわれ過ぎず、県民に対し、変更などを含め理由と経過がよくわかる行政を進め、県民とともに政策が動くような政治を目指したい。
地方のマニフェスト政治は緒に就いたばかりだ。住民との間で政策本位の信頼される政治に向けて努力をしたいと考える。
(注)同趣旨の意見を朝日新聞「私の視点」(平成16年6月22日付け)『マニフェスト 官民連携の自治めざして』に掲載しています。
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