福井放送番組「人間ネットワーク」
での知事発言要旨

 このページは、平成16年8月29日(日)に放送された木村尚三郎氏(東京大学名誉教授)との対談番組「観光立県をめざして〜住んでよし、訪れてよしの地域づくり〜」の発言要旨をまとめたものです。

【木村氏】
 旅人として、駅とか空港に降り立ったときに、この土地で何処へ行ったらよいかと思うが、いい絵葉書があるとそこへ行ってみたいと思う。全世界で7億弱の人が外国旅行に出かけていて、美しい景色はいっぱい見ている。景色が美しい絵葉書とかではなくて、人間の笑顔が写っていたり、暮らしと命の知恵とか楽しさが出ているような人間くさい絵葉書がいい。
【知事】
 福井県は自然にも歴史にも恵まれている。温泉もいろんな観光地もあるが、それぞれのパワーがいまいち弱い。
【木村氏】
 福井は信仰深いところで、仏様が生きている。先祖と一緒に生きていることはこれからの時代、いちばん大事な心のあり方ではないかと思う。
【知事】
 福井県は男性も女性も長生き。男女とも全国で第二位。この「健康長寿」をブランドにして売り出し、誇りにしたい。
【木村氏】
 生きるうえでのストレスが少ないのだと思う。最近フランスの経済誌で世界215の都市をピックアップして、どこの都市がいちばん幸せかという特集をしている。一位はカナダのバンクーバーとスイスのチューリッヒ。根拠はいずれも自然条件と都市的な諸施設とのバランスがとれていること。住みやすくしかも働きやすいこと。地下鉄や高層ビルの世界の大都市よりも緑があって安心できる中小都市が幸せである。全世界価値観が変わってきた。
【知事】
 福井は身近で農業もでき、兼業農家の方も多く、産業的にみてバランスが取れている。そのことが長生き、安心につながっているのではないかと思う。そして、福井の飲み水はおいしい。上中町には名水瓜割の水がある。おいしい水がおいしいおコメやお酒、豆腐など食につながっている。
 また、越のルビーというミディトマトや焼き鯖、おろしそば等おいしく自慢できるものがたくさんある。これらをどんなふうにうまくアレンジして日本の皆さんに知っていただくか、あるいは来ていただくかということになると工夫と知恵が要る。
【木村氏】
 食材を活かすためには都会のセンスがどうしても必要。例えば、福井出身で都会のレストランで働いている方を一人引き抜いてくる。そうすると盛り付けから何から店がおしゃれになって、女性が食べに来るようになる。女性は触覚や香りを大事にする。男性にない要素をたくさん持っている。この女性のセンスを活かすことが大事になる。
【知事】
 今回水害で被害を受けた鯖江市の河和田地区は漆器の名産地。今立町の和紙、それに武生の打刃物、宮崎村・織田町の越前焼など、コンパクトな地域に食に関わる器や道具、技術がまとまってある全国的に珍しい地域。水害の被害から何とか復興して再生に結び付けていくことが大事だと思う。
【木村氏】
 まちづくりや地域づくりには仏壇が参考になるのではないかと思う。ローソクに火をつけると亡くなった方の魂がいいオレンジの光に誘われて家に戻ってくる。お線香に火をつけると、戻ってきた魂は位牌に寄るという。仏壇にはいい香りやリンのいい音がある。亡くなった方が好きだった花とかお酒とかお供えしている。そして、読経を通して亡くなった方と拝んでいる方の心が通い合っている。
 このように仏壇とは極めて人間的な空間であって、いい光、いい香、いい音、いい花、いい食べ物があれば人は寄ってくるものだ。それといい意味で誰もが楽しめるイベントの活用は必要。
【知事】
 イベントといえば、福井では、今年は全国スポーツ・レクリエーション祭、来年は国民文化祭がある。それぞれの地域の伝統文化を活かしながらいろいろな試みを企画し、心の癒しを具体化していきたいと思う。
 また、今年は国際コメ年。コメは我々の主食であり、文化の中心、あらゆる食の文字どおりのご馳走。福井ではコシヒカリ発祥の地であることから、おコメは福井だということで売り出し、我々もそれに自信がもてるよう努力をしたいと思う。最近では空弁の焼き鯖ずしがある。
【木村氏】
 ペットボトルやノート型パソコンを見ても分かるように今は歩きながら暮らす時代。まさしく江戸時代の旅人と同じである。弁当は冷えていてもおいしければ売れる。これからは弁当の時代だ。
【知事】
 日本人全体が他の地域に関心を持って、何かを学びたいという風潮の時代になったように思う。
【木村氏】
 その地域にないものが他の地域にあるからであろう。福井には仏教があり、おいしいおコメ、そして、越前海岸や小浜のおいしい魚がある。
【知事】
 小浜は御食国として、朝廷においしいご馳走をおくってきた土地柄。素材もおいしいし、技術もあった。こうした福井の素材を活かしながら、行政や政治の面で言えば、戦略を持って売り出していきたい。
【木村氏】
 福井の農村地帯はもともと美しいのだから、そこにおしゃれなレストランがほしい。新鮮な素材があるのだからそこに美意識を加えるとよい。ヨーロッパには田舎にいい施設がある。とりわけ日本と違うのはトイレがいいこと。日本の場合、地方に行くと必ずしもよくないところがあるので、トイレをきれいにするとよい。
【知事】
 福井県は福井市を中心に市街地は戦災あるいは福井地震など災害があったため、下水道は全国的にみても整備されてきた。農村部も現在ほとんど整備されつつある。
 いずれにしても福井は繊維やメガネ、伝統産業などものをつくる技術は発達しており、それを活かす必要があるが、サービスするとか地域を売り出すとか、マーケティングなどが非常に薄いことが課題である。