みなさんこんにちは。ご紹介いただきました西川です。
今日は「防災減災フォーラム2006 in 福井」ということで、福井新聞社、全国地方新聞社連合会のご主催、また、国交省をはじめ地方公共団体、災害関係のそれぞれの団体、あるいは報道機関の後援によりますフォーラムということです。本来ですと、もっとたくさんのみなさんにご来場いただいているはずですが、あいにくここ数日の連続した降水、また昨日から大雨洪水警報が発令されました。本当はこの会場に来て勉強したいという方がたくさんらっしゃったはずですが、それぞれの市町の現場などで防災対策にあたっていらっしゃる方が多いのだろうと思います。今日はとくに熱心なみなさんがご出席ですので、そうしたことをふまえて、本日のご講演、シンポジウムの様子などを防災関係者や周囲の人にお伝えいただきたい思います。
私もつい先ほどまで県庁で防災対策をやっておりました。今日の講演はキャンセルをしなければいけないかなと思っていましたが、せっかくの機会ですので急きょ参上しました。十分な時間をいただいてお話をしたいと思っておりましたところ、そのような事情ですので少し簡単になってしまうかもしれませんがお許しをいただきたいと思います。
2年前の平成16年7月18日に、みなさんご存じの福井豪雨が発生しました。ちょうど夏休み前の3連休の真ん中でした。今回は3連休の終わりの日になりました。やはり災害というのは季節的に一定の周期で襲ってくることもあると実感をしています。ちょうど今は雨は小康状態ですが、また明日の未明から再び梅雨前線が北上し、福井のこのあたりに掛かってくるという予測があります。河川が増水したまま減水しておりませんし、一部がけ崩れがあって避難している方もいらっしゃったり、浸水している状況が若干みられるところです。だいたいコントロールはされている状況ですが、今後の状況を考えますといろいろな対応が必要です。そういう時期でのお話ということになります。
さて、災害については先ほど「忘れたころにやってくる」という寺田寅彦さんの引用がございました。忘れたころの「ころ」の字に「と」を付けますと「忘れたところ」となりまして、防災を忘れていると忘れた所にもやって来るわけです。やはり、備えというものが重要だと常々思っています。
災害の要諦はいろいろあると思いますが、まずは人命第一ということが基本です。2年前の災害でも、われわれはこれを最大眼目として臨みました。大きな豪雨でしたが、人命の被害は最小限に抑えられました。これはひとえに防災初動、最初のアクション、さらにそのもっと最初というべき最初動という時期での消防、警察、自衛隊、海上保安庁など機動力のある機関に早めに要請をして、手遅れにならないうちに救助できたものですから、500名以上のみなさんを孤立状態から、あるいは水の中で身動きができない状態の人たちを力を合わせて救助ができたということで、私はたいへんよかったと思っております。今後も、防災は人命第一、命あってのものですので、これに気を付けて参りたいと思います。
また、多くの事例を見ますと、住民のみなさんにはすぐに避難をしていただければよいのですが、どうしても自分のところだけは大丈夫だ、あるいは危険場所から出られても一度振り返るケースがあります。もう一度戻って様子を見たい、あるいは、まだ大丈夫だと判断されて、一度外へ出られてからまた戻られるといった事例がありました。そういう方が意外と被害に遭われ、住民の皆さんの立場からも、あるいはわれわれ行政の立場からも、前倒しで、後を振り返らないでまず人命第一で臨むということが何よりも大事だと思います。
次に防災対策の考え方ですが、これにはいろいろなご意見があると思います。災害対応はどうすると一番効果的でうまくできるのだろうということはいつも関心の的です。
私は、次のように思っています。災害に対しては、前出し、あることを予測した場合にその瞬間に準備を先立ってやる、専門用語で言いますと「前倒し活動」というものが重要だと思います。さらにもう一つは、よく似た意味ですが風呂敷を広くして対応をするということです。我々は災害時にはどうしても、ある一人の方が亡くなったという情報を聞きますと、その一名でとどまってほしいという気持ちが起こります。しかし我々が実際にニュースとして入手したときには、すでに10名、20名の方が亡くなられているということが意外と多いのです。すなわち今ある情報を小さくとらえようとしないで、本当はもっと被害が広がっているのではないかと考えて、幅広く風呂敷を大きめに開いて、その中に包み込めるような対策を講じる。前広、幅広、英語でいますとプロ・アクティブ、ということがきわめて重要であり、これができないと絶えず災害の後追いをするということになると思うのです。
専門家の中には、災害に備えて「悲劇的に対策を準備しろ」と言う方もいらっしゃいます。私なりに申し上げますと、これはプロ・アクティブに尽きるのではないかと思います。前回の豪雨災害でもそのように努めさせていただきました。実際に防災対策をしている立場からいいますと、そのようにしないと、災害を眺める感じになってしまい、目の前を災害があっという間に過ぎていってしまいます。災害の現状を手でつかめないという状態は良くないわけで、みすみす人命救助の機会を逸する、被害の事前防止の機会を逸することにもなる。ですからともかく災害をつかむ、そして対応をする。こういう難しいことですが、そういう心がけでこれからも進めていきます。決して災害を眺めているようなことにならないことが重要だと思います。
それからもう一つ、これは場所的なお話ですが、災害対応はやはり「現場主義」でなければなりません。防災は伝聞による仕事がかなりのウェイトを占めるのですが、それに加えて自分自身がいろいろな場所を見て、それを元にみなさんからお聞きしたお話を総合する。絶えずフィードバックをすることによって、災害対応はより現実的に、またスピードが上がると思っております。私自身も自転車で現場に行ったり、いろんなことをした覚えがあります。現場で話を聞きますと、意外と伝え聞いた話を順々に伝えているような話が多くて、今本当に何が起こっているのか、実際と合っていないことがあり得るのです。こうした間接性を各人が無くさなければ、迅速・的確な対応はできないだろうと思います。災害対応は、現場主義ということです。
さて、こうした災害については、行政が責任をもってやる部分が多いわけですが、最近の大きな流れとしてボランティアのみなさん、またいろんな立場の方たちが公共の精神を持っていただいて、何とかして応援しよう、助けようとする。少しでもみなさんを助けられないか、ここ10年来こういう動きが出てきています。平成7年の阪神淡路大震災が、最初の走りだったと思います。その後の平成9年には福井県でナホトカ号の重油流出事故がありました。この時、さらに具体的に日本のボランティアというものが、それぞれの地域で目に見える形に発展したのではないかと思います。その後、それぞれの災害の現場でボランティアが中心的に動いていただいたのが、一昨年の豪雨でもあると思っております。
特に福井の場合は福井方式ということで、ボランティアのみなさんが中心になって活動していただくと同時に、行政が協働で応援をする「協働方式」が見られました。ずっと将来になりますとボランティアだけでできるようになるのかもしれないと思いますが、なおしばらくは過渡期かと思います。ボランティアという言葉が法律に書かれたのは、阪神淡路大震災以降の災害関係法の改正の際に初めてカタカナの言葉が入ったくらいですから、まだ10年くらいしか経っていないわけです。もうしばらく、やはり行政とボランティアの協働というものが大事だと思います。全国的には、ボランティアはボランティアで、行政は行政だということで理想を追われるという考えもあります。しかしまだそれにはちょっと無理があると思います。福井県では協働方式で前回の豪雨災害でも行ったところです。また、新潟県に応援に行った際にもアドバイスをしたこともあります。しばらくはこういう方式でやるのがベターだと考えております。いずれにしても、ボランティアの皆さんは、行政ではできない応用のきく仕事ができます。また全国からたくさんの人がお見えになるわけですので、一人ひとりの力は大きくないかもしれませんが、これが総合しますと、積み重ねで大きな力になっていきます。これが被災された皆さんが、やる気をなくし落胆しているところにボランティアの力が来ますと、「元気を出してがんばろう」と思うわけです。このようにいい傾向が出るというのが、前回の水害でも見られた効果です。
福井県では、ボランティアの条例、基金というものを用意しています。これはボランティアの輸送のことや小道具などを行政から応援し、非常に動きやすくなるということです。道具がないとせっかく来ていただいてもすぐに行動できない。みすみす半日、1日を棒に振ってしまうということがあってはいけません。こうして行政からボランティアのお気持ちを応援することによって、非常にうまく回っていく、これが「福井方式」というものです。
災害から少したちまして、復旧とか復興の段階になる議論を一つ申し上げます。初動あるいは応急対策が進みますと、復旧・復興というレベルになるんですが、これまで戦後60年にはいろんな災害がありました。その節目に当たるのが伊勢湾台風や近年の阪神淡路大震災であったと思います。そうしたなか、公の応援というのは、個人の家の倒壊とか個人事業者の被害に対して個人を応援するという仕組みはほとんどなくて、だいたいが学校や公民館、道路など、公共的なものを応援するのが従来の復旧のルール的なものでした。しかし現在、公共施設や団体がそろい個人の生活水準も非常に上がってきたところです。したがって2年前の豪雨災害では、個人の被災についても一定の条件のもとに応援をしよう、ということを県として行いました。これが最近、全国的にも広がってきているのではないかと思います。計画段階では何万人もの方が適用を受けるのではないかと計算されるのですが、実際に応援をはじめますと、そんなに沢山はいらっしゃらない。福井の方ですと、自分のことは自分でやるから、他の人を応援してくださいという方が多くいらっしゃって、ある程度の予測のもとで個人に対する必要なものを応援するという時代になってくると思います。もちろんこれに対しては国も制度が弱いですから、地方団体がやったものについて、公の応援をしてほしいと私は思っており、そういう傾向がだんだん出ているのではないかと思います。
最後に復興のお話をしたいと思います。復興につきましては、今ほど「災害は忘れたころにやってくる」とお話しいたしましたが、意外と災害を受けて数年がたつと記憶が弱くなって、復旧という意欲が薄れる可能性が多いので、できるだけ短期間に復旧・復興をはかる必要があるわけです。今回、足羽川の事業、鯖江市の鞍谷川など、いろんな河川の災害がありました。国と地方が協力して5年の期限で工事を完成するという”激特事業”というものがあるんですが、激甚災害対策特別緊急事業の略語です。5年間で集中的にやってしまおうということです。今、足羽川ではしゅんせつを行っておりますが、これがその事業です。期限を決めて進めることが重要です。
さらに今回、より長期的な課題としては、足羽川ダムの事業、これはかなり長期の事業でありまして、15年あるいは20年を要する事業になります。80年に1回程度の洪水を予測して足羽川ダムの計画をこの災害を機に行う。地元池田町の深いご理解も得られ、今進めようとしているところです。こういう事業については、ダムについていろんな議論があるわけですが、地元の皆さん、あるいは下流域の皆さんがこういうダムが必要である、そしてそのためにみんなで協力するという皆さんの気持ちが大事です。こういうものはコンセンサスが得られる状況の中で決められるべきですので、今回そういう方針で臨んでおります。この事業につきましても長期の事業でありますけども、決して漫然と長い期間を要する事業にしてはなりません。できるだけ迅速に、かつコストに関しても可能な限り効率的な事業として行わせていただこうと思っております。長期的な復旧・復興の話を申し上げたものです。
結びのお話になりますが、いずれにしても災害や事故、アクシデントというものは、通常われわれが行っている行政の仕事に加えて、余分に入ってくる仕事という意識を持ってはいけないわけです。こういう災害・トラブル等々は、われわれが社会生活を行う上で一定の頻度で起こりうるものですので、これを真正面から受け止めて、こういう問題をしっかり住民のみなさんのために解決をするということが、県民に対する行政の使命です。そういう姿勢でこうした問題に取り組むということが、行政としては重要だと思っております。
限られた時間の中、日頃感じておりますところを、かいつまんで申し上げ、私のごあいさつを兼ねたお話としたいと思います。
ありがとうございました。
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