2004年1月3日(土曜日)
新春対談「福井を支える農業の力」
馬場 康一郎
農業生産法人(有)かみなか農楽舎 代表取締役
馬場 康一郎 (ばば こういちろう)
1948年生まれ、大阪府出身
大阪で設計会社と学習塾を経営
かみなか農楽舎の設立当初から事業経営に尽力
平成13年10月 農業生産法人(有)かみなか農楽舎代表取締役就任
平成十六年の新春を迎え、西川知事とかみなか農楽舎社長の馬場康一郎さん、同研修生の市川昇さんに農業の魅力や地産地消、エコ・グリーンツーリズムなどについて、話し合っていただきました。

知事 明けましておめでとうございます。

馬場市川 明けましておめでとうございます。

知事 全国的に見ても、福井県は県民の皆さんが健康に暮らしていて、男女ともトップクラスの長寿県です。これは、福井県の農業が大きな力の一つになっていると思います。農業が私たちの豊かさや元気を足元から支えていると私自身は考えています。
 かみなか農楽舎では、若い皆さんが一年あるいは二年と長期間にわたり、熱心に研修に取り組んでいると伺っています。非常に斬新な取り組みだと思いますが、具体的にはどのような取り組みを行っているのですか。

馬場 昨今の農村における全国共通の課題ですが、農業を基盤とする上中町でも、後継者不足が大きな問題となっています。これまでいろいろな角度からさまざまな取り組みを行ってきましたが、常に後継者の問題にぶつかりました。これからの農業を支え、農地を保全し、集落を活性化させるためには、後継者不足は深刻な問題です。
 かみなか農楽舎では、こうした農業の現状や上中町の問題点を都市の若い人たちに率直に訴え、上中町で農業を実践してもらうことを目的に研修事業を展開しています。
 研修生は一年あるいは二年間、農作物の栽培技術を勉強します。さらに、地域の一員になるような活動や地元の人たちとの交流を通じて、農業への道を探ってもらう研修も行っています。現在、七人の研修生が一生懸命、農業で自立していこうとがんばっています。

知事 若い皆さんが農業に関心を持ち、実際に農業に取り組むことは非常に大切なことだと思います。市川さんも研修生として、いろいろな農作業に取り組んでいるそうですね。

トマト栽培技術を学ぶ研修生
トマト栽培技術を学ぶ研修生
市川 私は埼玉県出身ですが、かみなか農楽舎で農業研修に取り組むようになり、すでに一年九カ月になります。こちらに来る前は食品販売などの仕事をしていました。農業の経験は全くありませんでしたが、かみなか農楽舎で一から農業を学び、毎日の農作業を楽しんでいます。
 私は子どものころから自然が大好きで、将来は自然と接しながら仕事をしたいと思っていました。それで、自然に囲まれた上中町に来ることを決めました。

知事 かねてからの念願がかない、農業でがんばっていただいているんですね。
 実は私も、普段は行政の仕事をしていますが、時間を見つけて家庭菜園を楽しんでいます。季節ごとにたいていの野菜は作っています。今の時期だと白菜や大根などを作り、自分で収穫して食べています。自分で作ったものを食べる、身近なものを身近なところで消費することは非常に大切なことだと思います。こうした動きをさらに広げていくことが重要ですし、実際に日本全体にも広がっているように思います。
 消費者は安全で安心な食の提供を求めています。現在、県では、地産地消運動を進めていて、ファーマーズ・マーケットなどの活動を応援しています。また、食品がどこで作られ、どのように流通したかという履歴情報を確認できるトレーサビリティシステムの導入に取り組んでいます。昨年の十二月には、まず牛肉について生産・流通履歴が分かるようになりました。
 
かみなか農楽舎でも、食の安全や地産地消について、いろいろな活動を進めているのでしょうね。
西川 一誠
福井県知事 西川 一誠
馬場 日曜日など休日に、若狭熊川宿の道の駅やJR上中駅で、地元の元気な女性の皆さんと研修生が一緒になって、朝市を開いてきました。最近、上中町にも農産物直売所が完成しました。町内の女性や年配の方も一生懸命で、花から野菜、お米、加工品に至るまで、さまざまな品物が並ぶようになり、非常に活気がでてきました。これからますます発展していってほしいと思っています。




知事 これからは特に、「都市から農村」へ人がどんどん流れることを期待したいですね。 
 県では今後、福井型の「エコ・グリーンツーリズム」を進めていきたいと考えています。多くの方から、「自分にはふるさとがないけれども、どこかで心のふるさとを持ちたい」という声をよくお聞きします。「ゆったりした生活をしてみたい」という願いも感じられます。さまざまなアイデアを持ちよって、福井県が「エコ・グリーンツーリズム」の大きな拠点の一つになれないかと思います。

市川 かみなか農楽舎では、田植えや稲刈りはもちろんですが、焼イモを作ったり、山で取ってきた竹を利用して流しそうめんをするなど、さまざまな企画を行っています。
 参加した皆さんから「楽しかった」、「また来たい」という話を伺うと、本当にうれしいものです。農業体験の企画を運営していて感じることは、参加者の皆さんが、企画というよりも、人にひかれて農楽舎に来るということです。それは、我々スタッフであったり、地元の方であったり、同じ参加者の皆さんであったり。これからの農業体験のキーワードは「交流」ではないかと感じています。

種を直接田んぼにまく「直播」を体験
種を直接田んぼにまく「直播」を体験
知事 馬場さんは、新年を迎え、かみなか農楽舎でこれからどういった取り組みや計画を進めていきたいと考えていますか。

馬場 かみなか農楽舎も今年で三年目を迎えます。ここで育った研修生が自立していく年でもあり、かみなか農楽舎も農業生産法人として自立していく非常に大事な年になります。
 これから市町村合併の時代を迎え、過疎地域もでてくれば、密集市街地もでてくることになると思います。こうした地域状況でも、均衡のとれた形で発展していくことができるよう、若い人たちが農業にもっと目を向けて、農業に取り組んでくれるようになればと感じています。

知事 市川さんはこれまで、いろいろな経験もかなり積まれたのではないかと思います。「石の上にも三年」ということわざにもあるように、さらに実力を発揮し、研修仲間とがんばっていく年になるかと思いますが、今年の抱負をお聞かせください。

市川 昇
農業生産法人(有)かみなか農楽舎 研修生
市川 昇 (いちかわ のぼる)
1978年生まれ、埼玉県出身
埼玉県で食品販売関連会社に約2年間勤務
平成14年4月から農業研修生としてかみなか農楽舎で農業を学ぶ
市川 私は今年、かみなか農楽舎を卒業し、四月から独立し、上中町大鳥羽で農業を始めます。今までと違い、すべて自分の作った農作物の収入で生活していくことになります。本当に大変で、厳しいことになるかと思いますが、その分大きなやりがいもあると思います。とにかく今は独立してやってみたいという気持ちでいっぱいです。
 かみなか農楽舎では、農業の基本中の基本を学んだわけですが、これから独立しても基本を忘れずしっかりと自分の体に刻み込んでやっていきたいと思います。

知事 ぜひ、皆さんと力を合わせて、福井の農業のためにご尽力いただきたいと思います。
 福井には多くの産業がありますが、農業は我々の生活や命の基盤となる産業です。また、福井の伝統や文化、環境問題などにも深くかかわる大事な産業です。
 まずは、農業に携わっている皆さんが、それぞれ工夫しながら課題に取り組んでいただくことが大切だと思います。私自身も、皆さんのお力を得ながら、一緒にがんばっていきたいと思います。
 今日は本当にありがとうございました。

馬場市川 ありがとうございました。

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