水稲(2007年9月)

実 況

 梅雨明けは8月1日と、平年より10日、前年より2日遅れた。8月上旬には台風5号の影響でフェーンとなり、強風・高温・低湿、その後は少雨・多照の暑い夏となった。7月と8月とで気象状況は大きく変わり、その変化に適応しきれなかった。8月下旬には、雨の日が多くなった。

1 気象状況と水稲生育
(1) 7月後半〜8月の気象と生育
 7月の低温・寡照・多雨から、8月(梅雨明け後)の高温・少雨・多照と大きく変わった(第1表、第1図、第2図)。また、8月上旬の強風・フェーンの影響もあり、稲の葉が傷んだものも目立った。
 7月の気象状況の影響で、農試気象対策試験の出穂期は平年よりも1〜3日遅くなり、出穂期の乾物重は、地上部はほぼ平年並であったが、根の乾物重は平年の84〜75%と小さく、T-R比が大きいという、地上部と地下部とのバランスが悪い稲体となった。また、枯葉も多かった(第2表、第3表)。出穂期〜穂揃期の葉色も淡くなった。

第1表 7月中旬〜8月中旬の気温と日射量の平年比(福井、8月中旬は8月29日までの値)
平均気温平年差平均日射量平年比備 考
(℃)(℃)(MJ/u/日)(%)
7月中旬23.7-1.38.758日照時間11.5時間(平年比28%)
7月下旬24.0-3.315.178
8月上旬29.0+1.921.4117最小湿度8月1日31%,2日43%
8月中旬29.7+2.623.3131降水量8月4日8.5mm,5日以降降水量0mm

図1 平均気温(福井7〜8月)図2 日射量(福井7〜8月)
第1図 平均気温(福井7〜8月)第2図 日射量(福井7〜8月)
(図中の本年の値はいずれも8月29日までのデータ)

第2表 農試気対ハナエチゼンの出穂期乾物重(g/u)
葉身枯葉葉鞘+稈地上部計全重LAIT-R比
H19207.516.7440.8107.460.3772.4832.75.112.8
H18213.818.8512.1115.669.3860.3929.64.112.4
平年204.79.8456.0102.571.5773.0844.54.910.8
平年比101170971058410099104119

第3表 農試気対コシヒカリの出穂期乾物重(g/u)
葉身枯葉葉鞘+稈地上部計全重LAIT-R比
H19195.722.2490.6104.768.2813.2881.44.111.9
H18195.813.4468.390.875.4768.3843.74.010.2
平年211.112.3512.294.390.5829.9920.44.79.2
平年比931819611175989687130

(2) 県内各地の出穂状況、生育状況
 県内のハナエチゼンでは、出穂期は7月18日頃からはじまり、大部分の地域では7月20日以降となった。コシヒカリやイクヒカリ等中生品種の出穂期は、ほとんどが8月に入ってからとなり、8月5日以降に出穂期となったものが多かった。強風・フェーンにより葉身の周辺部で褐変したものはあったが、褐変籾の発生はほとんどみられなかった。
 コシヒカリの出穂期〜穂揃期の葉色はSPAD値で31〜33程度のものが多く、やや淡めのものが目立った。幼穂形成期頃の葉色がやや濃かったこと、梅雨明けが遅れたため前年のような穂肥の追加ができなかったこと、などによると思われた。
 出穂後、圃場表面の土が白く乾いているところもみられ、上位葉が巻いていたり、下葉の枯れ上がりが多いものもみられた。また、穂の上部(先端に近いところ)と下部(穂首に近いところ)とで登熟の進み方の差が大きいものや、いわゆる「焼けいろみ」となり籾の色が茶色っぽくなって熟しているものもみられた。
 病害虫では、7月下旬に葉いもちが散見されたが、8月の高温、少雨により、穂いもちの発生は少なかった。しかし、紋枯病は8月に入って上位葉へ進展したものが増加した。早生のカメムシ類の被害(斑点米)は、全体的には多くなかったが、一部で散見された。
 ハナエチゼンでも圃場内で部分的に倒伏しているものもみられた。コシヒカリも8月下旬の降雨により倒伏が増加している。
(3) 胴割注意報
 出穂期の根量が少ない、出穂期〜穂揃期の葉色が淡い、出穂後、登熟前半の気温が高く経過した、という状況であり、コシヒカリ胴割注意報を8月17日に発令した。
 他の品種でも胴割れしやすい状況となっており、コシヒカリと同様、注意が必要である。
(4) 収穫作業
 早いところでは、CEの早生受け入れ開始が8月19日や21日から開始、というところもあるが、多くのところでは、8月23日〜24日頃から受け入れ開始している。
 早生の収穫作業は8月25日〜26日頃が最盛期となった。これまでのところ、ハナエチゼンで胴割粒が多発したという報告はない。8月28日以降、雨の日が続くという気象予測となっており、収穫作業の遅延が懸念される。
 コシヒカリ等、中生品種の収穫は、9月上旬から開始される見込みである。

対 策

1 収穫直前までの間断通水
 間断通水を収穫5日前まで徹底する。
 収穫直前まで、稲体の活力を保つように管理することが必要である。圃場の土が白く乾くと、根も乾き、活力を失う。登熟不良や胴割発生を助長するので、厳禁である。
(1) 収穫直前まで、稲体に水分と空気を供給する。そのため、間断通水を継続する。フェーン時には一時的に湛水する。灌水に当たっては、排水路側まで見回りし、土が白く乾くことのないように、均一に水が行きわたるようにする。フェーンの危険が去ったら、すぐに落水し、間断通水に戻す。
(2) 干ばつ時に海水遡上による塩類濃度障害が発生する地域では、ECで3mS/p以下、塩素濃度では800ppm以下を取水の目安とする。しかし、緊急の場合には上記の約2倍の値を目処に、稲の生育状況やその後の天候を考慮して潅漑の判断を行う。

2 適期収穫
 刈り遅れは、胴割米の増加を招くので、絶対に刈り遅れない。
 収穫開始期は、籾水分25%となったときであるが、おおまかには出穂後の積算温度(出穂期翌日から毎日の日平均気温を足していった値)で推定する。本年は、ハナエチゼンで860度、コシヒカリで990度を目安とする。各地で出穂期を把握し、積算温度がこの目安数値に近づいたら、実際に籾水分を測定し、必ず籾水分を確認する。積算温度だけに頼らない。必ず、籾水分と上位枝梗の先端の粒の状態を確認する。 今年は圃場による生育差や圃場内でも個体差が大きいので、圃場ごとに籾水分を測定したり、圃場内の成熟のばらつきをよく観察するなど、特に注意が必要である。籾水分は30%以下となれば、携帯型のケット水分計で測定可能となる。籾水分は、30%以下のとき、1日あたり0.5〜0.7%程度低下する(ただし、降雨後の水分測定には注意が必要である)ので、それを基に収穫開始時期を決める。本年は、登熟期が高温で経過し、一穂内でも、登熟の進み方に差があるので、上位の枝梗の先端の籾の状況(軽胴割れがみえないか)も確認する。
 また、圃場をよく観察し、黄化の早い圃場や葉の枯れ上がりが大きい圃場、倒伏程度の大きい圃場から収穫するなど、収穫作業の計画を立て、円滑な収穫作業ができるようにする。高温年は、どうしても収穫適期幅の日数も短くなりやすい(通常年で、収穫適期幅は早生品種で4〜5日、コシヒカリで6〜8日程度)ので、地域全体でも注意する。コシヒカリで早くから倒伏しているものは、穂発芽が懸念される。穂発芽したものは別仕分とし、他のものと混ざらないようにする。

3 乾燥調製
(1) 過乾燥の防止
 本年は、登熟期間が高温で経過しており、米粒がもろいことが考えられる。そのため、急激な乾燥は避け、1時間当たりの水分減少(毎時乾減率)は0.8%以下とする。それ以上温度を上げない。玄米の仕上げ水分は15.0%を目標とし、過乾燥にならないよう注意する。
(2) できるだけ2段乾燥を行う。
 籾水分の差が大きいことが想定される。乾燥作業終了後に乾燥が進んだり、水分が戻ったりすることがないように、2段乾燥とするなど、籾水分の均一化を図る。
 2段乾燥:水分18%程度で6時間程度乾燥を止め、調湿を行った後、仕上げ乾燥を行う。
(3) 籾摺り作業は早くても乾燥終了から2〜3日後とし、籾が完全に常温に戻り、水分ムラがなくなってから行う。

4 土づくり
 収穫作業を終えたら、次年度の稲作のため、土づくりを行う。
・地力向上のための有機物施用(完熟堆肥施用が望ましいが、次善策として、稲わらすき込み。稲わらの腐熟促進のためには、石灰窒素を加え、気温が高いうちにすき込む)。
・ケイ酸の補給(ケイ酸質資材の施用)。
・深耕(作土深15cm確保のため、秋耕時に耕深確保する)。

5 雑草対策
 オモダカなど、多年生雑草の発生が多い場合は、水稲収穫後、雑草の茎葉が再生してから地下部移行性の除草剤を茎葉処理し、塊茎の形成を抑制する。
 また、プラウ耕による反転耕は、下層の塊茎を地表近くに出し、今年できた一年生雑草の種子を土中深くに埋め込む効果が期待できる。
 近年の稲作において、SU系除草剤を連用しており、広葉雑草(多年生雑草を含む)が多く残る場合は、使用法の不備(水管理など)の他に広葉雑草のSU抵抗性を考慮する。次年度稲作では、指導機関と相談して除草剤を選択するなど、除草対策を再検討する。




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