曹洞宗大本山永平寺があり、命あるものに感謝して、ありがたく食をいただくという文化が宿るこの土地、永平寺町にある有限会社幸伸食品は、豆腐製造メーカーとして創業した。豆腐を基本としたその技術は、ごまどうふ、豆腐会席料理から、テリーヌやと豆乳チョコレートまで広がり、農林水産省主催「全国優良ふるさと食品コンクール」で、2000年より9年連続で受賞を果たしている。凛とした空気に溶け込む永平寺町のオフィスで、ひときわ輝く笑顔、それが、朝倉千津恵さんだった。
「私、Uターンには違いないのですが、ちょっと変わった経歴なんですけど、いいですか?」と尋ねられる。理由を聞くと、高校卒業後、県内の大手家具店に入社、その後アパレル業界へ。そして広島へと望む職業に就いてきた。そして、福井県へのUターンを果たし現在に至る。広島では家具メーカーで、家具デザイン、販売に加え、ISO9001の管理担当を任されていた。仕事が面白くなってきた頃ではあったが、両親との約束を守るためにUターンすることになった。家具やアパレルを経験して、どうして今は食品メーカー勤務なのですかと聞くと。
「学生のころから、なんとなく考えていたことがあるんです。それは、生活の基本となる「衣・食・住」をできる限り学びたいということ。アパレルが衣、家具が住だとすると、今の仕事が残るひとつの登竜門なんです。」とはきはきと応えてくれた。
自分の目的を果たすために、一時的に福井を離れ、最終的に結果を求めて福井に帰ってきたことは、立派なUターンではないだろうか。そんな目的意識を持った女性は、福井には多いはず。それにしても、あまりにも順調なステップを踏んでいる朝倉さん。
「私、人に恵まれているのだと思います。仕事に就きたいと思った会社に応募すると、不思議と採用されるのです。」と本人は首をかしげるが、朝倉さんの持って生まれた明るさと、仕事に対する真摯な思いが採用につながっているに違いない。さらに朝倉さんは続ける。
「欲をいうと、開発する、作る、販売する、という流れの中で自分を試してみたいのです。その点でも今は製造から、販売、直営レストラン・幸家での自社製品での創作料理の提供と一連の作業が体験できます。私自身も、豆腐づくりやレストラン・幸家関わることで、作り手とお客様の関係がよく分かるようになりました。ですから現職の通販事業も、作る人、お客様の笑顔が思い浮かぶだけに力が入りますね。」
「今後は、人材育成を意識しながら会社にとっての戦力を育てていきたい。そんな人材の中で、もっと自分を磨いていきたい。」と言う。今はネット販売攻略に夢中、おとりよせナンバーワンも視野に入っている。
では、広島での生活を体験した上での福井県とは?
「そうですね。広島では福山市というところに会社があったので、帰省が大変でした。その点福井って、案外移動拠点としてはいい場所にあるのだと初めて感じましたね。金沢、京都、大阪、名古屋へのアクセスが良く、そして東京でも飛行機移動だと2時間ちょっとで行けますよね。便利で、自然も豊かで、いい県なんだなってあらためて感じています。」
そんな福井県の出身者には、朝倉さんのような自分探しのため県外で活躍している女性もたくさんいると思いますが、Uターンを考えている方には、どんなメッセージがありますか?
「私が一時期福井を離れたのは、自分一人ってどれほどの力があるのだろうというのも試してみたかったのです。一人前になりたかった。でも、やっぱり家族のそばにいることが大切だと思い始めた矢先に出会えたのが現在の会社なのです。福井県の企業は、決して県外企業に負けてはいません。福井という優れた環境と雇用、そして大切な友だちや家族に囲まれて自分を切磋琢磨してみてはどうでしょうか。県のUターン情報センターも支援をしてくれますし。」
終始明るい空気をふりまきながら仕事を続ける朝倉さんは、会社のムードメーカーとして頑張っている。