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天心とはいかなる人物であったか?と問われるとき、「天心という巨人をひとくくりには出来ない。」と答えざるを得ない。
美術史家、ロマンチスト、作家、政治思想家、詩人、…。
西欧のインテリを驚嘆させた天心の語学力や泉のごとく湧き出るその豊富な知識を背景に、弁論・文体そのものが生来の詩人、ロマンチストとして裏打ちされているだけに、読む人、聞く人を感動させてやまないのが天心の著作である。「東洋の理想」においては「私は諸君に暴力でなく、男らしさを呼びかけているのだ」と訴える。壮大な叙事詩であり、インド滞在中にこの天心が語ったノートは当時のインド独立運動家によって語り伝えられ、バイブルとなった。
天心は暗示やインスピレーションの鋭い人でもあった。天心は、美術学校の校長時代、美術院時代、「明月」という題を出し、ただ月を描いてはダメだと要求、また「笛声」では、笛を吹かずに笛の音の感じを出せと要求した。また、モチーフに悩み、天心に相談したインドベンガルの画家は、天心が画布に置いた二本のマッチで、翻然と悟ったという。
これらの霊感的な暗示によって大観、春草らが大いに啓発された。とにかく、和(日本)漢(中国)洋(欧米)にわたる卓越した知識、「空気を描け」という暗示的表現力。今日このような教師がいれば…と思わずにはいられない。
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