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平成17年度第4回テ−マ展 「魅力再発見!水彩・版画・素描」

 

 平成17年度第4回所蔵品によるテ−マ展は、水彩・版画・素描作品をご紹介します。

 

 

1 名 称            平成17年度第4回所蔵品によるテ−マ展 

「魅力再発見!水彩・版画・素描」

2 会 期             平成17年12月7日(水)〜平成18年1月15日(日)

3 会 場             福井県立美術館

4 開館時間        午前9時〜午後5時(入場は閉館30分前まで)

5 休館日            1219日(月)、1229日(木)〜平成1812日(月)

6 観覧料            一般・大学生  100円 (団体30名以上は2割引)

                            高校生以下・70歳以上・障害者手帳等をお持ちの方は無料

7 主な作品        ・葛飾北斎「諸国名橋奇覧 ゑちぜんふくゐの橋」 江戸時代

・パブロ・ピカソ「三人の裸婦」 1968

・ジャン=フランソワ・ミレー「グレヴィルの海岸の岸壁」 1871年頃

・原雅幸「廃船」 1987年   ほか

 

 

【水彩】

水彩の魅力はなんといっても、明るく透明で繊細かつ柔らかい独特の持ち味でしょう。油絵具などが持つボディの鈍重さを嫌う画家たちは昔から水彩を好みました。ただ水彩といっても、その定義の幅は広く、水溶性の展色剤を使う絵の具と理解すれば、一般に水彩絵の具とされている透明水彩から、グワッシュ(不透明水彩)、日本の水墨画や岩絵の具、更には西洋のフレスコまで含めることができます。ただし本展では狭義に、いわゆる近代に西洋から輸入され、顔料に定着剤としてアラビアゴムを混ぜた透明水彩やグワッシュを扱っています。

狭義の水彩画の歴史はルネサンス期に遡り、ドイツのアルブレヒト・デューラーが嚆矢とされます。しかし水彩画が最も発展したのはなんといっても1819世紀のイギリスでしょう。グリセリンを絵の具に混ぜ長期保存に耐える絵の具を発明したことが発展の一因とも言われますが、いずれにしても水彩画はまさにイギリスの国民的絵画になったといえます。この頃のイギリスの水彩画を日本で見る機会はそんなに多くはありませんが、その美しさは確かに人を魅了するものがあります。因みに当館でその代表的版画シリーズ『ヨブ記』を所蔵しているウイリアム・ブレイクも、水彩画を好み、油彩画を書かなかったイギリスの重要画家の一人です。

さて日本では、江戸末期に来日したイギリスのジャーナリスト、チャールズ・ワーグマンを嚆矢として、次々と外国人によって水彩画技法が持ち込まれ、その魅力が浸透し、明治後半にはかなりの興隆を見ました。また今日に至るまで数多くのいわゆる水彩画家が生まれましたし、油彩画家でも補助的絵の具として水彩絵の具を使ったことのない画家はまずいないと思われるほど浸透しています。

当館で所蔵している水彩画はあまり数多くはありませんが、それでも今回の展示されている作品を見ていただければ、その魅力の真髄と多様性を理解していただけると思います。

 

【版画】

版画は水彩や素描より更に多様性に富んだ魅力を持っています。またより独立した表現メディアで、素描のように本画の準備段階で使われてきたものでもありません。ただ版画には長い実際的な道具としての歴史があります。即ち、19世紀になって写真術が発明され近代的な印刷技術が開発されるまでは、重要な情報伝達メディアとして機能し、まさに職人の仕事だったのです。当時版画に最も要求されることは、できるだけ多くを刷ることのできる丈夫な版でした。エングレーヴィングという銅版画技法がこのような需要を満たす版でした。まさに脅威の職人技で彫られていますが、少し芸術性に欠けるきらいがあります。このような中で、最初に版画を芸術として意識したのはオランダのレンブラントといわれます。レンブラントは、はるかに脆弱で僅かの枚数しか刷れないエッチングやドライポイントといわれる銅版画技法で作成したのでした。

版画の種類には大きく分けると凸版、凹版、平版、孔版の四種があります。凸版は木版、凹版は銅版、平版はリトグラフ(石版画)、孔版はシルクスクリーンがそれぞれ代表的な版種です。木版には木の板目を使う板目木版と木口を使う木口木版があり、日本の浮世絵版画などは板目木版ですが西洋木版は木口木版です。銅版画は更に直刻法と腐食法に分かれます。直刻法とは直接銅版に線を彫り込んだだけで版にするもので、エングレーヴィング、ドライポイント、メゾチントなどがあります。腐食法は、彫り込んだ線を更に酸で腐食させる方法で、エッチングやアクアチントがあります。リトグラフは石灰石を版にするもので、版上に油性のクレヨンで絵を描き、絵の描かれてない部分を油をはじくよう処理して、描画部分だけ親油性になり他の部分はインクをはじくという版を作り、その上に油性のインクを載せ、紙に印刷する技法です。リトグラフは18世紀末に発明され、銅版画が芸術手段として認識されるようになっていた19世紀に、新聞印刷など、実際的な情報伝達手段として機能したものです。またシルクスクリーンは枠にシルクなどを張り、織目を通して絵の具を直接その下に置いた紙に刷り付けるという技法です。

どの技法もそれぞれ独特の持ち味があり、その性格上本物が多数作れることから販売価格も比較的安くなり、最も一般に普及している美術作品といえるでしょう。

 

【素描】

素描も水彩画と同じく多様な理解が可能です。素描はフランス語のデッサンに該当する言葉として頻繁に使われます。この言葉は英語ではドローイングに該当します。また線を中心として対象をすばやく写し取る方法をクロッキーといいます。これは英語ではほぼスケッチに該当すると思います。またスケッチといえばオイル・スケッチという油絵で行うスケッチもあります。更にエスキースという言葉もあって、これは絵画作品の大雑把な下絵を意味しますが、しばしば最終的な作品のための下図をいうこともあり、水彩や油彩で作られることもあります。またカルトンという言葉もありますが、これは壁画などの比較的大画面の作品の制作段階で、最終作品と同サイズに描くデッサンを意味します。さらに日本語の習作に該当するエテュードという言葉などもあります。

絵画とはタブロー(洋画)や本画(日本画)などのように、画面を構成し油絵具や日本画顔料を使って仕上げられた作品を意味し、素描はその準備的な作業で行うものという考えが長い間美術の常識でした。ただ印象派以前には画家は戸外の現場では素描だけをして、タブローはアトリエで素描と記憶を頼りに描くというのが普通だったので、素描の意味は現在より更に重要だったといえます。また現在でもいわゆる洋画や日本画を描く人のほとんどは、その準備段階として素描や下絵を描くでしょうが、近年では、絵画の伝統的な分類が崩れ、必ずしも何かの準備段階あるいは下絵としてではなく、独立した最終作品としてのドローイングやデッサンが生まれています。

 

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