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平成18年度第2回所蔵品によるテーマ展 −絵になった物語− について

 

 福井県立美術館では、平成18年度第2回所蔵品によるテーマ展「絵になった物語」を開催します。

このテーマ展では、岩佐又兵衛の「和漢故事説話図」、オノレ・ドーミエの「古代史」シリーズ、ウイリアム・ブレイクの「ヨブ記」などに加え、古今東西の文学や伝説を題材にした絵画を展示し、絵になった物語の多様な展開と表現を御紹介いたします。

 なお、岡倉天心コーナーにおいて、天心ゆかりの作家の作品を展示しておりますので、併せて御覧くださるよう御案内いたします。

 

1 名称           第2回所蔵品によるテーマ展 −絵になった物語−

 

2 会期           平成18年5月26日(金)〜7月16日(日)

 

3 開館時間    午前9時〜午後5時(入場は午後4時30分まで)

 

4 休館日       平成18年6月5日(月)、19日(月)、7月3日(月)

 

5 観覧料       一般・大学生100円(30名以上の団体は2割引)

                        高校生以下、70歳以上および障害者手帳等をお持ちの方は無料

 

6 主な作品

【絵になった物語】

木村武山 「伊勢物語図」 20世紀(明治時代)

岩佐又兵衛 「和漢故事説話図」 17世紀(江戸時代)

ウイリアム・ブレイク 「ヨブ記」 1826

オノレ・ドーミエ 「古代史」シリーズ 1842年など

 

【岡倉天心コーナー】

山田鬼斎 「鷲(わし)」 1895(明治28)年

菱田春草 「温麗・躑躅双鳩(おんれい・つつじそうきゅう)」 1901(明治34)年

木村武山 「苦行の図」 19世紀(明治時代)など

 

7 解説ボランティア

テーマ展期間中の毎週土曜日午後1時30分から3時30分まで、

美術館ボランティアによる解説があります。

 

8 内容

 物語のなかのもっとも劇的で、印象深い場面を選んで絵画化することは古来から行われており、複雑な推移を文字が表現する一方で、言語に尽くせない情景の視覚的なイメージの伝達には絵画が大きな役割を果たしてきました。絵画は従属的でありながらも、時として文字より饒舌に物語世界を見せてくれ、それは携わった画家たちの独自の表現に負うところが大きいといえましょう。

 

 岩佐又兵衛勝以は江戸時代初期に、京都、福井、江戸で活躍した絵師です。その強烈な印象を与える画風で一世を風靡し、浮世絵の開祖であるといわれています。又兵衛による「和漢故事説話図」の各図はもとは一巻の巻物で、現在は一幅ずつの掛幅装とされています。「源氏物語」や「平治物語」などの男女の情感溢れる恋模様から男たちの躍動感に満ちた戦いまで、大仰な仕草でどこか人間臭さをもった登場人物が軽やかで流麗な筆致をもって描かれています。

 

 オノレ・ドーミエによる石版画シリーズ「古代史」は、18411222日に絵入り日刊風刺新聞「シャリヴァリ」に連載が始まりました。登場するのは「イリアス」や「オデッセイア」など古代文学のなかの誉れ高き英雄や絶世の美女たちですが風刺の利いたドーミエのこと、その忠実な再現ではありません。同時代のドミニク・アングルがローマに行き、古代ギリシャ・ローマなどの美術から影響を受けて、理想化された人体や自分の美の理想を追求したのに対し、芝居好きのドーミエは古典劇の観賞を重ね、日常性丸出しの役者たちにいたく刺激され個性溢れる登場人物を描き出すにいたりました。それは「グラックス兄弟の母」の、ローマの希望の星となる二人の息子がどう描かれているかからも一目瞭然です。

 

 ウイリアム・ブレイクの最高傑作と評価の高い「ヨブ記への挿絵」の連作は、彼が生涯をかけて聖書と格闘し、その思想がどこまで展開していったのかを知ることができる記念碑的な作品です。聖書のなかでも難解だといわれるヨブ記は「義人がなぜ苦しむのか」という古来からの人間の叫びにするどく切りこみ、ヨブ記に挿絵をかくということはおのずからその問題に対峙することになります。すべてを失い、体中を腫物で覆われ、郊外のごみ捨て場で灰にまみれる義人ヨブは、友人からも余程罪深いことをしたのだろうと告発され、言葉をほとばしらせます。ではなぜ悪人が栄え、義人が苦しめられるのか。友人たちとの激しい問答の末に嵐の中から神の声が聞えたとき話は大団円を迎えます。ブレイクの作品は幻想的で様々な暗示に満ちており、鑑賞者に絵を「読む」ことを求めます。第一図では困難に逢う前の牧歌的な幸福に安住するヨブが描かれていますが、樹木に懸かった使用されていない楽器、沈みゆく太陽、眠りとまどろみにある羊や牧洋犬などは覚醒せざるヨブの精神状態を表しています。また、最終図でヨブとその一族は樹木からおろされた楽器を神を賛美しつつ吹き鳴らし、昇りゆく太陽と目覚めた羊や牧洋犬が描かれているのはヨブの信仰の覚醒を示しているのです。

 

 本展示ではこれらの物語絵に加え、東西の文学や伝説を題材にした絵画作品を展示することで、絵になった物語の多様な展開と表現を鑑賞いただければと思います。

 

問い合わせ先

福井県立美術館

福井市文京3丁目16-1

TEL0776-25-0452/FAX0776-25-0459

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