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平成18年度第3回所蔵品によるテーマ展 ―アートのなかの生き物たち―

 

福井県立美術館では、平成18年度第3回所蔵品によるテーマ展―アートのなかの生き物たち―を開催します。

このテーマ展では、加山又造の「人と駱駝(らくだ)」や狩野興以(かのうこうい)の「韃靼人狩猟図屏風(だったんじんしゅりょうずびょうぶ)」、岩佐勝重の「群鶴図(ぐんかくず)」など、アートのなかで多様に表現された生き物たちをご紹介いたします。

なお、岡倉天心コーナーにおいて、天心ゆかりの作家の作品を展示しておりますので、併せて御覧くださるよう御案内いたします。

 

 

1 名称           第3回所蔵品によるテーマ展 ―アートのなかの生き物たち―

 

2 会期           平成18年7月28日(金)〜8月31日(木)

 

3 開館時間    午前9時〜午後5時(入場は午後4時30分まで)

                        金曜日は午後8時まで開館(入場は7時30分まで)

 

4 休館日       会期中無休

 

5 観覧料       一般・大学生100円(30名以上の団体は2割引)

                        高校生以下、70歳以上および障害者手帳等をお持ちの方は無料

 

6 主な作品

―アートのなかの生き物たち―

加山又造「人と駱駝(らくだ)」 1957(昭和32)年

狩野興以(かのうこうい)「韃靼人狩猟図屏風(だったんじんしゅりょうずびょうぶ)」 17世紀(江戸時代)

岩佐勝重「群鶴図(ぐんかくず)」 1672年(江戸時代)など

 

―岡倉天心コーナー―

狩野芳崖(かのうほうがい)「柳下放牛図(りゅうかほうぎゅうず)」 1884(明治17)年

菱田春草「海辺朝陽(かいへんちょうよう)」 1906(明治39)年

堅山南風「O氏像」 1954(昭和29)など

 

7 内容

 絵や彫刻の題材はたくさんありますが、人間が他の生き物に寄せる関心は非常に高く、アートのなかにさまざまな形で見つけることができます。生き物を表現したいという欲求はある時ラスコーの洞窟の空駆ける動物たちとなり、生き物に寄せる親近感はある時「鳥獣戯画」の二足歩行の擬人化された動物たちを生み出しました。そのように古来からつきることない興味の対象であった生き物たちを3部に構成して、その表現と魅力を紹介いたします。

 

●第1部 室町から近代までの日本画

 室町時代の仏教絵画「羅漢図」には、中国の絵を真似て描くしかなかった異国の動物である虎が実際とはかけ離れた姿で描かれます。

 また、東洋絵画の主題の一つである花鳥画は、絶えず中国の画風を受け入れながら咀嚼・消化され、その時代時代に新しい生き物表現を生み出しました。岩佐勝重の「群鶴図」は桃山時代の城郭建築の隆盛とともに生まれた豪壮な金壁障壁画の流れを汲む花鳥画で、江戸時代に福井城本丸御殿鶴之間の襖絵として描かれたものです。鍬形寫ヨ(くわがたようさい)の「菟道蛍狩図(うじほたるがりず)」、島田雪湖の「月下孤狼図」、島田墨仙の「秋夕」などは江戸時代中期から近代にかけて画壇諸派が写生的な意匠を凝らして生み出したものといえるでしょう。

 他にも、狩野興以(かのうこうい)の「韃靼人狩猟図屏風(だったんじんしゅりょうずびょうぶ)」は中国北方のモンゴル系部族・韃靼人の狩猟と打毬(ポロのようなゲーム)の様子を描いた武家風俗画で、そのなかには躍動感溢れる馬、逃げ惑う猪や鹿などの動物を見つけることができます。

 このように、日本画のなかでの生き物の表現は多種多様で豊かな変遷を遂げてきたといえます。

 

●第2部 いろいろな表現

・西洋版画に見られる生き物

 西洋では羊や竜は特別なシンボルを表します。

 羊はとても頑固で臆病で群れをなして生活し、人間によく似ていると言われます。牧者が緑の牧場に連れて行き、そこで臥させ、胸に抱いてかわいがり、羊も自分の牧者の声を聞き分けます。その密接な関係は神と人との関係を表し、ヴァランタン・ル・フェーブルの「眠る羊飼い」に見られるような羊と牧者の組み合わせはとても好まれる画題となっています。

 竜は広範な神話や英雄伝で登場しますが、英雄と竜の闘争は善と悪の闘争を象徴します。そして英雄が竜に打ち勝った時に得るのは宝物、女性、困難を克服したという自己実現、またアドリアン・コラールトの「馬上の聖ゲオルギウス」などの聖人伝においては真理の勝利を宣言します。

・現代の表現

 第2次世界大戦後、荒廃した社会の中で貴族的な優雅さを保っていた日本画は受け入れられず、画家たちは新しい表現や、自分たちを絵の中に引きずり込むような生々しさを求めて模索します。三上誠や下村良之助は日本画家として出発しながらさまざまな実験的な技法で日本画と洋画の区別をなくし、抽象的な生き物たちを表現しました。また、デザイン的な加山又造、牧歌的な池田遙邨等々、生き物の表現も時代の流れを汲んで伝統から脱却した気鋭の作家たちによる独自のものに変化します。

 洋画では西洋の前衛美術運動としてすでに紹介されていたフォービズムやシュルレアリスム(夢や無意識、非合理といった心の世界を探求)などにつながる試みが戦後本格化しました。福井でも戦前は「北荘画会」、戦後は「北美文化協会」として大正11年から60年間に渡って土岡秀太郎が推進した前衛芸術運動は、山岸与三治、上出穂美、堀田清治を育て、毎年夏に開かれた夏季講習会の講師には、鈴木千久馬、中村徳三郎、藤沢典明、松崎真一、小野忠弘など日本の現代美術を切り開く多くの洋画家が招かれ指導にあたりました。この新しい「アート」の中に息づく生き物たちには、徹底した写実としても、作家の内面世界の投影物としても描かれて、彼らの試みた美術文化運動の軌跡をたどることができます。

 そのほかにも、動物の生態まで観察して描く入江酉一郎や、今日の映像表現に多大な影響を与えた草分け的存在の久里洋二、装飾性で花鳥画の伝統を今に伝える竹内浩一など、生き物をアートに描きたいという作家の欲求は今に続いているのです。

 

●第3部 みつけてあそぼ!

 絵のなかにはちょっと見ただけではそこにいる生き物を見つけることが難しいものがあります。模様のなかに隠れていたり、抽象的だったり、題名で想像させたり、、、。現代作家たちの作品の中からそれらを見つけてみませんか?この夏、アートのなかの生き物たちと遊んでみてください。

 

 

問い合わせ先

福井県立美術館

福井市文京3丁目16-1

TEL0776-25-0452/FAX0776-25-0459

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