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平成18年度第5回所蔵品によるテーマ展 ―特集・ドーミエ―

 

福井県立美術館では、平成18年度第5回所蔵品によるテーマ展―特集・ドーミエ―を開催します。

 

1 会 期            平成18年12月1日(金)〜平成19年1月14日(日)

 

2 休館日          12月18日(月)、29日(金)〜1月2日(火)

 

3 開館時間       午前9時〜午後5時(入場は午後4時30分まで)

 

4 観覧料          一般・大学生 100円(30名以上の団体は2割引)

                         高校生以下、70歳以上および障害者手帳等をお持ちの方は無料

 

5 趣 旨

オノレ・ドーミエはフランスの画家であり、版画家、彫刻家です。ドーミエが活躍した19世紀のフランスは、革命やクーデター、戦争が絶え間無く起こり、多くの市民が市街戦で倒れるような激動の時代でした。政治体制も王政、共和政、帝政へと多様な変化を遂げました。そのなかで、人並みはずれた鋭い描写力で描き出されたのは、権力に対する痛烈な批判、そしてユーモア溢れる人間喜劇でした。

 今回は、ドーミエの本領が遺憾なく発揮され、その名を高めた政治風刺新聞「カリカチュール」、「シャリヴァリ」に掲載された石版画のさまざまなシリーズをご紹介します。

なお、常設している岡倉天心コーナーでは、木村武山など天心ゆかりの作家の作品を展示しております。

 

6 主な作品

【特集・ドーミエ】

オノレ・ドーミエ

 「ラ・カリカチュ−ル」(1830〜35年)より

                          「トランスノナン街、1834年4月15日」

                          「僕たちも殺されたかいがあったもんだ!」

「ロベール・マケ−ル物語」(1839年)より

                          「ムッシュー、わたくし1000フランを盗まれたんですが、、、」

 

【岡倉天心コーナー】

木村武山「林和靖」  大正時代

横山大観「田家の雪」  1937(昭和12)年

 

 

7 内 容

〜激動の19世紀フランスを描いた男〜

 フランスの画家であり、彫刻家、そしてすぐれた風刺画で喝采を浴びたオノレ・ドーミエ(1808−1879年)は、マルセイユで生まれ、一家でパリに移り住んでのち習得した石版画の才能を、新進気鋭のジャーナリスト、シャルル・フィリポンに見込まれて、七月革命のさなかにデビューします。その後もさらに絶え間ない革命と反動で揺れ動く、激動の19世紀を描き続けるドーミエはまさに時代の申し子でした。

 1830年の七月革命はドラクロワの描く「民衆を率いる自由の女神」によっても知られ、ドーミエ自身もバリケードで戦い、ブルボン復古王朝を倒し、出版の自由という戦果を手に入れました。当時22歳だったドーミエを風刺画へと導いたのは、この高揚した時代の雰囲気と、出版の自由を勝ち取ったことによるジャーナリズムの隆盛でした。ドーミエの活躍の舞台にもなった政治風刺新聞は、革命で血を流した者と利益を手にするものが必ずしも一致しない真相を暴き出し、訪れた平和にしばし満足していた民衆に、自分達の権利に対する新たな自意識を目覚めさせました。

 ドーミエ初期の政治風刺画の傑作に、政府軍による労働者一家惨殺の現場を描いてその非道を告発した「トランスノナン街、1834年4月15日」や、獄に繋がれた男が共和国の不滅を確信している「それでも彼女(自由)は進む」があります。ドーミエは共和主義の旗印を鮮明に、革命の果実を大ブルジョワに奪われていること、平和と自由が侵されていることを痛烈に批判しました。

 ドーミエにとって風刺画はもはや単に文字の読めない民衆を笑わせる慰みものではなく、自己の主張を伝達するものであり、生涯に4000点もの作品を生み出すたゆまざる努力によって、芸術の高みにまで引き上げました。

 出版規制で直接的な政治風刺画の新聞掲載が困難になっても、身近な人々をユーモアを交えて描く社会風刺に転換し、国内外のニュースをすぐさま絵で報道したり、パリの人々、芸術家達、親子、友人、夫婦などが巻き起こす日常生活を描いて新たな分野を開拓します。そして間接的な政治風刺を試み、七月王政の拝金主義には、自分の利益のために手段を選ばないで奇想天外な詐欺を働く『ロベール・マケ−ル』を登場させてからかい、権力欲をちらつかせる未来の皇帝ルイ・ナポレオンの出現には、『ラタポワ−ル』という帝政復活に執念を燃やす悪のシンボルを生み出して、その存在に警鐘を打ち鳴らします。

 帝政時代のかつてなく厳しい出版規制の下でも、寓意的な表現によって絶えない戦争の愚かしさを訴え、国家が植民地獲得に血道を上げているときに平和を求めるメッセージを発信します。抑圧されても頭をもたげる不屈の抵抗精神は、見るだけでおしゃべりが聞こえてきそうな1コマの絵で、批判し、告発し、笑い飛ばし、そして戦争の悲惨さを訴え、風刺画の可能性を押し広げました。

 普仏(ふふつ)戦争に敗れて帝政が崩壊し、パリ・ミュ−ンで多くの人民が倒れ、その犠牲の上に共和国が打ちたてられたのを見届けた後、ドーミエは完全にその視力を失いました。時代とともに生きたドーミエが描いたのは移りゆく19世紀フランスそのものでした。

 

 

問い合わせ先

福井県立美術館

福井市文京3丁目16-1

TEL0776-25-0452/FAX0776-25-0459

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