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平成19年度第1回所蔵品によるテーマ展

「平成18年度新収蔵品紹介」「鈴木千久馬」

 

今回の所蔵品によるテーマ展は、平成18年度に当館が購入した新収蔵作品の紹介と、鈴木千久馬を特集いたします。

岡倉天心コーナーでは、天心ゆかりの作家の作品を展示しています。

 

1 展覧会名      平成19年度第1回所蔵品によるテ−マ展

                          「平成18年度新収蔵品紹介」「鈴木千久馬」

 

2 会  期        平成19年5月11日(金)から6月17日(日)まで

 

3 会  場        福井県立美術館

 

4 開館時間      午前9時から午後5時まで(入場は閉館30分前まで)

 

5 休 館 日      5月21日(月)、6月4日(月)

 

6 観 覧 料      一般・大学生  100円 (団体30名以上は2割引)

                          高校生以下・70歳以上・障害者手帳等をお持ちの方は無料

 

7 主な作品

「平成18年度新収蔵品紹介」

安田靫彦            『方丈閑日』             1937(昭和12)年

内海吉堂            『桟道高秋』             1897(明治30)年 ほか

「鈴木千久馬」

鈴木千久馬         『寝椅子の裸婦』      1925(大正14)年

鈴木千久馬         『鏡の前』                1974(昭和49)年 ほか

「岡倉天心コーナー」

橋本雅邦            『天保九如図』         1897(明治30)年頃

下村観山            『奇襲』                    19世紀(明治時代) ほか

 

8 展示内容

「平成18年度新収蔵品紹介」

福井県立美術館では平成18年度に購入2点、寄贈5点、合計7点の新収蔵品がありました。

●購入

日本画:安田靫彦(やすだゆきひこ)作        「方丈閑日」       昭和12         81.5×115.0cm   紙本墨画淡彩

安田靫彦(18841978)は、当館が収集に力を入れている岡倉天心やその弟子筋の画家たちとゆかりの深い画家で、天心の没後美術院が再興されたときの中心人物の一人です。

本作に描かれている人物は、大徳寺の室町時代前期の禅僧一休宗純(いっきゅうそうじゅん)と足利家の蜷川新左衛門(にながわしんざえもん)です。一休は晩年、京都から少し離れた近郊に、いま薪寺と呼ばれている別庵酬恩庵を構えて、大徳寺と往復していたといわれています。この絵では、その方丈で蜷川新左衛門と閑談している様子が描かれています。庭の枯山水の石組みはいまでも残っており、昔のままのものではないようですが、その石組みをこの画家らしく整理して描いています。一休の風貌については、現東京国立博物館保管の肖像を参考にしていると思われます。色彩が極度に制限され抑えられているのも、この清閑な情景を表現するのにふさわしいといえます。

本作は靫彦が力を入れていた七絃会に出品されたもので、いくつかの重要な画集にも掲載された貴重な作品といえます。

掲載画集:『現代日本美術全集 安田靫彦』昭和49年 集英社、『自選安田靫彦画集』昭和46年 朝日新聞社、『米寿記念安田靫彦展図録』昭和45年 朝日新聞社

 

日本画:内海吉堂(うつみきちどう)作         「桟道高秋図」               明治30         87.3×170.0 cm  絹本著色

内海吉堂(18491925)は福井県敦賀に生まれ、四条丸山派の塩川文麟や森寛斎に学んだ後中国に渡って研鑽を積みました。帰国後は南画に転向し、日本南画協会の結成や京都の青年絵画共進会に参加。内国勧業博覧会や日本絵画協会等で褒状受賞の他、日本美術協会や文展でも入選し、京都画壇で活躍しました。山田介堂、長田雲堂とともに「越前三堂」と称されます。

本作は、岡倉天心が主宰していた日本絵画協会の第三回絵画共進会(明治30年)で一等褒状を受賞し、当時高い評価を得た作品です。また昭和2年に東京府美術館で朝日新聞社主催で開催された「明治大正名作展覧会」にも出品された重要な作品で、まさに吉堂の代表作と言えます。

 

●寄贈

日本画:安田靫彦作        「方丈閑日画稿」 昭和12年頃      76.0×111.0cm   鉛筆、墨、紙

上記購入作品「方丈閑日」の画稿で、作品研究のために重要な資料といえます。

 

洋画:古沢岩美(ふるさわいわみ)作           「メデュサ」         1960 193.8×97.0 cm  油彩、カンバス

 古沢岩美は中央で活躍したシュール・レアリズムの画家として著名ですが、福井で新しい美術運動を展開していた「北美文化協会」の招きで、1951年の夏に講習会の講師として来福しています。この関係で、161718年度と3年連続で寄贈を受けています。またこの「メデュサ」の下絵が昨年度寄贈されています。

 

工芸:河井寛次郎(かわいかんじろう)作     「三色釉水指」    昭和37年頃      14×直径21cm         陶器

三浦小平二(みうらこへいじ)作     「青磁蓋物(シルクロード)」           平成18年頃      21×直径23cm         磁器

平成16年度に、県内敦賀市に本社を置く株式会社ジャクエツからの陶磁器20点の寄贈を受けましたが、今回はこれに続く寄贈で、これで当館のジャクエツ・コレクションは総数22点になりました。

 

工芸:作者不詳 「善財童子立像」   9世紀(唐時代)              3.5cm           銅造鍍金

この小立像は、福井県大野市出身の岡島辰五郎氏旧蔵で、親族の方より寄贈されました。

 

【特集・鈴木千久馬】

 本県出身画家としては初の日本芸術院会員である、鈴木千久馬は1894(明治27)年福井市に生まれます。1914(大正3)年に東京美術学校予備科西洋画科に入学し、前田寛治等とともに藤島武二に師事、同校卒業の1921(大正10)年には第3回帝展に初入選します。その後、『寝椅子の裸婦』、『椅子に凭れる裸婦』などによって3年連続しての帝展特選受賞という偉業を成し遂げ、約2年間のフランス留学を終えた1929(昭和4)年には、弱冠36歳で帝展審査員に選ばれました。

 ところで千久馬がそのような活躍を見せた大正から昭和にかけての日本洋画界に、多大な影響を与えていたのはマチスやドラン、ブラマンクに代表されるフォービズム(野獣派)でした。この画派は鮮やかな色彩と激しいタッチによって「野獣(フォーヴ、fauverie)のようだ」と評されており、心が感じる色彩を自由に表現しました。当時の千久馬も独自のフォーヴの表現を模索して、荒々しいタッチと黒を基調とした重量感溢れる色彩を用いる作品によって、デビューから間を置かずに洋画壇の頂点へと登りつめます。

 1934(昭和9)年には帝国美術学校(現武蔵野美術大学)西洋画教授となり、後進の育成にも力を注ぐようになった千久馬は、ソフトな筆遣いで中間色を中心とした作品を多く描くようになります。若き日からのたゆまぬ探求は、晩年には『鏡の前』や『横臥裸婦』にみられるような白を基調とした高雅な世界に昇華され、千久馬芸術の完成形をみることができます。

 今回の展示では、千久馬の初期から晩年までの画業の全容を紹介するとともに、その軌跡をたどるなかで1人の画家の到達した芸術の真髄を皆様に味わっていただくことを願いとしております。

 

 

問い合わせ先

福井県立美術館

福井市文京3丁目16-1

TEL0776-25-0452/FAX0776-25-0459

 

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