章立て
第1章 「シュール」への憧れから自然へ
手塚は大学在籍時よりシュルレアルな作風に強く惹かれ、人物を主なモチーフとして幻想的な構成の中に風刺やメッセージを込めた作品を描いていました。在学中の結婚、そして長女の誕生を経て、次第に自然への想いを強くしていきます。「シュール」から画家の代名詞ともいえる風景画へ。初期の作品から日本美術院賞・大観賞3回連続受賞の作品までをご紹介します。 《夢模様》1980年、個人蔵
《市民》1991年、セレネ美術館蔵
第2章 大胆、かつ繊細な視点1992年に39歳という若さで院展同人に推挙された手塚は、更なる飛躍をみせます。この時期には大自然の威力や神なる力などスケールの大きいテーマに大画面へ挑んでいます。一方で虫食いの枯葉や散りかけの花など儚く小さき〝かそけきもの″への共感もみせ、表現の領域を拡張しています。雅で繊細な表現から、力強く重厚感に満ちた作風への変化をご覧いただきます。 《惜春》1995年、郷さくら美術館
《裏窓》1992年、個人蔵
第3章 自分探しの旅――「軽井沢」シリーズほか画家を象徴する風景画において、スケッチは制作の要の一つです。画家は様々な場所を訪れてはスケッチに描き、イメージを養っています。近年は「絵になる風景」の宝庫だという軽井沢に別荘を建て、制作に取り組んでいます。軽井沢シリーズを含む、手塚の豊かな風景表現をご覧いただきます。 《冬の川》2016年、足立美術館
《天橋立》2012年、足立美術館蔵
第4章 祈りのかたち手塚は明治神宮から特別な制作の依頼を受けました。それは明治神宮の内陣に安置される御神座のうしろに立てられる屏風であり、画家は「日月」という日本の伝統的な主題に挑みました。祈りのかたちとして手塚作品に現れる「日月」をご紹介します。 《月読》1999年、奈良県立万葉文化館蔵
《月明那智》2010年、足立美術館蔵
第5章 内なる宇宙――お茶との出会い手塚は茶道との出会いによって、それまでの外界への関心は次第に自身の内面へと向かうようになりました。お茶を通じて到達した画家の新しい画境を示す作例とともに、自身が制作した棗や香合も併せて展示します。 《きらめきの森》2005年、個人蔵 《棗 あひみての》2018年、個人蔵
第6章 光を聴き、風を視る手塚作品における光の表現はいつも神秘的で象徴的です。どこからともなく射し込む超自然的な光、大気中にたゆたう光、かそけきものが放つ仄かな光など。手塚は神の気配を自然に探して、画面に描き込むといいます。そのためには音のない光を聴き、形をもたない風を視なければならないのかもしれません。 《こもれびの坂》1996年、個人蔵
《おぼろつくよ》2012年、個人蔵
手塚雄二の素描手塚はスケッチを創作の糧とするタイプの画家といえます。スケッチを通じて写し取られた自然は、画家のなかに蓄積され、やがてイマジネーション豊かな絵画へと昇華します。本来は公開されるはずのないスケッチを特別に公開し、画家がこれまで歩んできた軌跡をご覧いただきます。 《軽井沢 南ヶ丘》2006年、作家蔵
《那智》1999年、作家蔵
関連資料略歴 撮影:平間至
手塚雄二 略年表
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