手塚雄二展

章立て

第1章 「シュール」への憧れから自然へ
 手塚は大学在籍時よりシュルレアルな作風に強く惹かれ、人物を主なモチーフとして幻想的な構成の中に風刺やメッセージを込めた作品を描いていました。在学中の結婚、そして長女の誕生を経て、次第に自然への想いを強くしていきます。「シュール」から画家の代名詞ともいえる風景画へ。初期の作品から日本美術院賞・大観賞3回連続受賞の作品までをご紹介します。
                                                   第2章 大胆、かつ繊細な視点
 1992年に39歳という若さで院展同人に推挙された手塚は、更なる飛躍をみせます。この時期には大自然の威力や神なる力などスケールの大きいテーマに大画面へ挑んでいます。一方で虫食いの枯葉や散りかけの花など儚く小さき〝かそけきもの″への共感もみせ、表現の領域を拡張しています。雅で繊細な表現から、力強く重厚感に満ちた作風への変化をご覧いただきます。
                                     第3章 自分探しの旅――「軽井沢」シリーズほか
 画家を象徴する風景画において、スケッチは制作の要の一つです。画家は様々な場所を訪れてはスケッチに描き、イメージを養っています。近年は「絵になる風景」の宝庫だという軽井沢に別荘を建て、制作に取り組んでいます。軽井沢シリーズを含む、手塚の豊かな風景表現をご覧いただきます。
                                     第4章 祈りのかたち
 手塚は明治神宮から特別な制作の依頼を受けました。それは明治神宮の内陣に安置される御神座のうしろに立てられる屏風であり、画家は「日月」という日本の伝統的な主題に挑みました。祈りのかたちとして手塚作品に現れる「日月」をご紹介します。                                       第5章 内なる宇宙――お茶との出会い
 手塚は茶道との出会いによって、それまでの外界への関心は次第に自身の内面へと向かうようになりました。お茶を通じて到達した画家の新しい画境を示す作例とともに、自身が制作した棗や香合も併せて展示します。            
                         第6章 光を聴き、風を視る
 手塚作品における光の表現はいつも神秘的で象徴的です。どこからともなく射し込む超自然的な光、大気中にたゆたう光、かそけきものが放つ仄かな光など。手塚は神の気配を自然に探して、画面に描き込むといいます。そのためには音のない光を聴き、形をもたない風を視なければならないのかもしれません。             手塚雄二の素描
 手塚はスケッチを創作の糧とするタイプの画家といえます。スケッチを通じて写し取られた自然は、画家のなかに蓄積され、やがてイマジネーション豊かな絵画へと昇華します。本来は公開されるはずのないスケッチを特別に公開し、画家がこれまで歩んできた軌跡をご覧いただきます。             

関連資料

略歴

        手塚雄二 略年表
1953年
神奈川県鎌倉市に友禅染付絵師の家に生まれる。
1976年
東京藝術大学に入学。
1979年
第34回春の院展に初出品、初入選。
1982年
東京藝術大学大学院修了。日本画研究室非常勤助手となる。
1989年
第74回再興院展で初の日本美術院賞(大観賞)を受賞。以後、三回連続受賞。
1992年
日本美術院同人に推挙される。
1995年
東京藝術大学助教授に就任。
2004年
東京藝術大学教授に就任。
2013年
福井県立美術館特別館長に就任。